総IT化時代の夜明け SMBの現場を追って
<総IT化時代の夜明け SMBの現場を追って>22.JA鹿児島県経済連(上)
2005/04/04 16:18
週刊BCN 2005年04月04日vol.1083掲載
競り情報システムを大幅刷新
2003年度の鹿児島県の荒茶生産量は2万1300トンと、静岡県の4万900トンに次ぐ全国第2位の生産量。全国の荒茶生産量の約23.2%を占めている規模だ。JA鹿児島県経済連によれば、鹿児島県全体の茶の栽培面積は拡大の方向にあるといい、ここ数年は毎年50-150ヘクタールずつ拡張しているという。04年の県内栽培面積は8480ヘクタールだが、これを2010年までには1万ヘクタールに拡大する計画もある。県内の荒茶の生産量のうち約7割がJA鹿児島県経済連の競り市に持ち込まれる。競り市で取り扱った荒茶の取扱高は、03年度の約191億円に対して、04年度は約32.4%増の約253億円に増えた模様だ。伸びた背景には大手飲料メーカーの一部が外国から国内へと調達先を変えたことなどが挙げられるという。鹿児島県の主要作物の1つとして、茶事業は拡大基調にあるだけに、競り市は大いに盛り上がる。
この競り市の盛り上げに一役買っているのがコンピュータシステムである。競り市には県内27社の茶商が集まり入札を行う。新茶の出荷時期などの繁忙期は1日最多で6回の競りを行う。最も高い値段を付けた茶商が競り落とす仕組みだが、この競りを公平かつスムーズに行うには、コンピュータ導入による効率化が欠かせない。競りの途中でもたつき、盛り上がりの雰囲気を損ねると、競りの値段にも影響しかねないだけに、スムーズな競りの進行には常に神経を尖らせる。
JA鹿児島県経済連茶事業部が本格的なコンピュータ化に乗り出したのは98年4月。当時、オフコンで動かしていた競りを、オープン系のクライアント/サーバー(C/S)型に変えた。オフコン時代は、競り市で茶商が落札希望価格を紙に書き、最も高い価格をオフコンに入力する“半手動”方式だった。98年4月に稼働したC/S型の「茶総合情報ネットワークシステム」は、落札希望価格を専用のハンディターミナルに入力。これをコンピュータが自動的に集計して、最も高い価格を選び出す仕組みに変えた。
茶の競り市は全国約20か所あるが、「ハンディターミナルで価格を入力する仕組みを導入したのは、JA鹿児島県経済連が最も早い」(古園重信・茶事業部主査)と、全国的に見ても早い段階からIT導入に力を入れてきた。今年4月から本格稼働した新システムでは、98年4月から稼働している「茶総合情報ネットワークシステム」の機能を大幅に向上させた。
茶総合情報ネットワークシステムは、茶の売買に関わる総合的なネットワークシステムだが、その中核となるのは競りに関する部分である。旧システムでは、入札してから最も高い単価を集計し、落札価格が決まるまで約25分かかっていた。新システムではこの時間を半分の12分程度に短縮することに成功した。落札価格は生産者の携帯電話やパソコンに配信する仕組みも新しく作った。
コンピュータの処理速度を上げただけでなく、入札が完了する前に、茶商の入力ミスなど、常識的に見て明らかに間違った入札価格をリアルタイムに監視できるようにし、落札価格が決まるまでの時間を半減させた。入札から落札価格が決まるまでの時間のわずか10数分の短縮により、競り市の雰囲気は大きく変わる可能性があるという。
3月下旬から5月中旬まで行われる新茶の競り市は、1日最多で6回開かれる。生産者が見込んでいた価格よりも低い落札価格が出た場合、即刻、落札価格が低かった理由を分析し、生葉を蒸す強さや揉む強さを変えて、より高い値段で落札してもらえるよう対策を練る。一方、茶を仕入れる茶商は、一定の品質の荒茶を必要量確保しなければならない。それだけに、落札価格が発表される時間が半分になれば、その分、戦略を立て直す時間が確保できる。
新茶のシーズンが終われば、今度は夏茶の競り市が8月中旬まで開かれ、10月には秋冬番茶の競り市が開かれる。競り市は年間通算で約150日開かれ、こうした繁忙期の「1分1秒の争い」(同)のなかでの時間短縮は大きな利点がある。JA鹿児島県経済連としても、競り市が円滑に進むことで、雰囲気を盛り上げ、結果的により高い落札価格が示されることに期待を寄せる。
次回は、茶の生産履歴を管理する取り組みについて検証する。(安藤章司)
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