視点
Linuxの行方
2005/03/21 16:41
週刊BCN 2005年03月21日vol.1081掲載
事態はその様には展開していない。e-Japan戦略を推進する人々やLinuxベースの気鋭のシステムインテグレータの苛立ちをよそに、レガシー基幹システムは一向に減らない。汎用大型機OSはかつてコンピュータメーカーが自己の事業の発展を賭して命懸けで開発したものである。そしてユーザーに対してすべての責任を負った。今日においてもこれを基に我が国の情報・通信システムの大半は成り立っている。
原因は奈辺にあるのか。リーナス・トーバルス氏と若干の純粋な人々の意に反し、その周辺に取り巻きろくな開発もせず中途半端にこれを事業化しようと出現した企業はLinuxの現状・将来を正しく伝えてはいない。誇大にその効果を喧伝する。企業の基幹システムの中核部分を誰が責任をもってくれるか分からないオープンコミュニティのソフトウェアに委ねることはできない。その危険さと今のLinuxの実力を、情報通信システムの現場を預かる人々は知っているのである。UNIX、Linux、OSS制度などへの過度の期待、実情が正しく伝えられていないことに問題がある。新しい技術が現れ、その経済効果に期待を持ち支援することは必要であるが、成功までに多くの時間を要することも知ってもらわねばならない。Linuxは有望である。だが安心して使うにはさまざまな問題を未だ内蔵していることも事実である。Linuxに対する国の期待も大きい。これを契機に日本の情報産業が自動車、半導体に続く国際産業に育って欲しいとも思っているに違いない。関係省庁の補助・指導を得て多くのメーカーがLinux推進に関わっている。
各専門家は、特に技術者は、いつ「期待」に応えられる製品になるか、「Linuxの現状と将来」を知らせ続け人気先行を警めてもらいたい。多くのLinux技術者の今日の努力が貴重な日本のソフトウェア技術資源の浪費にならぬよう、「日本を支える産業になり得なかったIT産業」の誹りを再び受ける事にならぬように。
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