情報化新時代 変わる地域社会
<情報化新時代 変わる地域社会>第44回 青森県 「ユビキタスあおもり推進プロ」始動
2005/03/21 20:43
週刊BCN 2005年03月21日vol.1081掲載
“生活創造社会”の実現を目指す 暮らしやすさのトップランナーへ
■05年度は10のプロジェクトを推進青森県は、暮らしやすさではどこにも負けない地域づくり〝生活創造社会〟を掲げ、暮らしやすさのトップランナーを目指す。自分流の豊かさを求めて果敢に挑戦し「ともに未来を創り上げられる暮らしやすい社会の実現」(鈴木信也・青森県企画政策部理事)に向けて、04-08年度までの5か年計画で「重点推進プロジェクト」を立ち上げた。08年度まで、毎年度約20億円規模で新規プロジェクトを立ち上げる。財源は重点予算「ふるさと再生・新生枠」を充当する。
05年度の重点推進プロジェクトは、人材育成関連の「自立する人づくり推進プロジェクト」や農林水産関連の「〝攻めの農林水産業〟総合販売戦略プロジェクト」など10本の柱からなり、通称「わくわくテン」と呼ばれている。「ユビキタスあおもり推進プロジェクト」は、ITを活用したプロジェクトとして、わくわくテンの中に盛り込まれている。
04年度から始まった重点推進プロジェクトだが、「ユビキタスあおもり推進プロジェクト」が立ち上がるのは05年度から。
青森県では税収入の減少や地方交付税の減額など財政環境が非常に厳しいなかで、既存業務の予算削減を強力に進めている。IT関連の予算も軒並み制限されることが多いものの、重点推進プロジェクト全体の年間予算約20億円のうち通常予算に加えて4000万円余りを戦略的に割り当てる見込みだ。
「ユビキタスあおもり推進プロジェクト」では、ユビキタスネットワーク技術の活用により、県民生活の向上や産業の活性化、行政サービスの向上などを実現させることに主眼を置いている。同プロジェクトは「生活向上化ユビキタス戦略」、「産業活性化ユビキタス戦略」、「行政電子化ユビキタス戦略」、「ユビキタスあおもり環境づくり戦略」の4項目からなり、モバイルや電子タグを使った実証実験や調査・普及活動などに取り組む。
「生活向上化ユビキタス戦略」では、洪水時の避難活動を支援する情報システムと県内で出土した遺物などの史料を電子タグを使いデータベース化する。少しでも早く住民や市町村の災害担当者に洪水情報を提供するため、携帯電話を使って洪水避難に関する情報を配信する。携帯電話のメールアドレスを事前に登録してもらい、避難情報をいち早く配信する〝プッシュ型〟の配信方法の有用性を検証する。
県内には縄文時代を代表する特別史跡「三内丸山遺跡」があり、これまで数万点の遺物が出土している。遺物を保管している約2万8000個の保管箱に電子タグを取り付け、これをもとに史料のデータベース化に取り組む。データベース化した史料のうち公開可能な史料はインターネットを経由して「考古学ファンなど一般市民に公開する」(柏木司・青森県企画政策部情報システム課電子県庁推進グループリーダーユビキタスあおもり推進プロジェクト担当総括主幹)ことも検討している。
■電子自治体化の遅れを取り戻す
「産業活性化ユビキタス戦略」は、温度センサー付きの電子タグを使い、青森産のリンゴの品質維持追跡調査を行う。リンゴの品質劣化現象の1つに、果肉などの色が褐色に変色する「褐変(かっぺん)」がある。これは流通過程での温度管理が原因と推測されており、今回の追跡調査では、温度センサー付きの電子タグをリンゴ箱の中に付けて温度変化を記録。褐変との関係を調べて改善に結びつける。
「行政電子化ユビキタス戦略」は、県および市町村の行政手続きのオンライン化を推進する。具体的には電子申請・届出の受付システムや電子入札、電子調達導入、庁内管理業務のITを活用した効率化など電子自治体化に取り組む。
電子自治体の推進そのものは03年4月に電子自治体推進協議会を立ち上げ、LGWAN(総合行政ネットワーク)などを整備してきた。だが、青森地区の厳しい財政事情や市町村合併を優先する自治体が多いことから、電子自治体推進は他の都道府県に比べて遅れがちだった。行政電子化ユビキタス戦略では、「県民にとって、本当に使いやすい行政電子化」(千葉耕悦・青森県企画政策部情報システム課地域IT推進グループリーダー総括主幹)の実現を目指す。
「ユビキタスあおもり環境づくり戦略」は、道路標識などが雪に埋もれてしまっても、電子タグの無線技術を使い、安全に歩行できる「歩行支援」の有効性を検証する。国土交通省が行っている「自律移動支援プロジェクト」とも連携する。青森県は豪雪地域だけに、冬季の歩行の安全性向上は、お年寄りや子供、障害を持った人々に「役立つ技術」(鈴木・企画政策部理事)と期待されている。
厳しい財政状況が続く青森県だが、ユビキタスネットワーク技術などを積極的に活用し、暮らしやすさのトップランナー「生活創造社会」の実現に力を入れる。
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