視点

これからのリーダー像

2005/03/14 16:41

週刊BCN 2005年03月14日vol.1080掲載

 ニッポン放送株を巡るライブドアとフジテレビジョンの攻防は、考えさせられることが多い。ライブドアが新球団設立に名乗りを上げた時は、今のプロ野球の閉塞感を打破しようとする若者らしい行動に共感を覚えたが、今回の行動には違和感が残る。堀江貴文社長はある番組で、「カネがすべて。カネで買えないものはない。心も買える」とコメントしていたが、そういう話を聞くと「何か違うのではないか」とみんなも感じ始めているのではないだろうか。

 今回、ある意味良かったのは、堀江氏が日本人であったことだろう。これが米国や欧州、中国などの企業だったらどうなっていたか。彼らが今回のような行動に出た時に、フジテレビの発言、行動パターンも通用しない。2006年の商法改正を控え、堀江氏の行動はこういう時代が1年後に迫っていることをいみじくも教えてくれた。

 昨年末、東京中小企業投資育成の社長を務めておられた熊野英昭さん(元通商産業事務次官)が急逝されたが、亡くなられる直前の論文で、教育のあり方に言及しておられた。IT時代を迎え、金融の構造が根本的に変わろうとしているなか、今こそ教育の問題を真剣に考える必要があると私も考える。幸せ、倫理観、歴史観、環境問題などに対する視点をきっちり踏まえたうえで、もう一方の視点でグローバル競争、マネーゲーム、世界戦略を捉えていける人材の教育が今の日本には急務だ。

 これからのリーダー像は、単にお金だけでなく、人類に対するしっかりした考え方を持ち、「そのために今こうやっている」と言える人材が求められている。そうしたリーダーを育てるうえで、現在の大学は十分に機能しているとは言い難い。現在の教育はゼネラリスト、マネジメント層の育成が基本にあり、スペシャリストの養成ではない。この結果、大学を出てから専門学校に再入学する例も急増している。

 ドラッカーが説いてきたマネジメント層、つまり中間層の存在は、これまでの企業社会では通用できても、IT時代には重荷になりつつある。最近、アメリカのコンサルタントから「今後の時代に求められるのは、全員にゼネラルな教育を行うのではなく、5%くらいの人をリーダーに育て上げるといった発想も必要なのではないか」という指摘を頂いた。傾聴に値する言葉のように思える。
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