個人情報保護法で変わる“IT風景”

<個人情報保護法で変わる“IT風景”>6.IT監視の影で心の問題も

2005/03/14 16:04

週刊BCN 2005年03月14日vol.1080掲載

 個人情報保護法の完全施行により、企業の中で一番影響を受けるのは「コールセンター」だろう。業務上、個人情報に接する機会が最も多い部門である。

 専門誌記者に話を聞くと、「どの企業も『どんな些細な穴もふさげ』と経営トップから厳命が出ているので、現場はてんやわんやの状態」と話す。

 人間系の対策で言えば、「オペレーターの制服を何も隠し持てないようにポケットのないものに変えた」、「カメラやメモリを備えた携帯電話はセンター内への持ち込みを禁止した」などの話が聞こえてくる。完全に「性悪説」の側に立っている。

 技術(IT)系の対策も進んでいる。入退室のバイオ認証はもはや珍しくなく、室内で働く人を監視するためにモニターカメラを設置する企業も出ている。

 さらに、オペレーターが使用するパソコンの機能を業務に特化して限定し、データベースに対してどのような操作を行ったのか、詳細な監査ログをとるのが一般的になってきた。

 「アクセス権限のないデータを開こうとしたりすると、管理者に自動通知され、ミスしたオペレーターは理由を説明しなければならない企業もある」(専門誌記者)という。

 ITは人を管理・監視するツールとしても最大限活用されている。それで何も問題がないかと言えば、ある企業のコールセンター管理者がこう指摘する。「コストをかければ、ITで管理はどこまでも強化できるが、その分、人のケアが大変になる」。

 コールセンター業界共通の悩みは、オペレーターの離職率が高いこと。閉鎖空間の中で座りっぱなし。顧客への応対を管理者から常にモニタリングされ、クレームの矢面に立つ。相当なストレスを抱え込む職種である。

 個人情報保護法の影響で管理が極限に達し、「一挙手一投足どころかキー操作ひとつまで管理する状態」(コールセンター管理者)になれば、そこで働くことのストレスはさらに高まるだろう。

 人が流動的だと、採用や教育にコストがかかる。オペレーターのスキル平均が下がり、顧客対応で問題を引き起こしやすい。

 ITは人を管理・監視するツールとしても有効だが、そこでは“人の心”の問題が出てくる。(坂口正憲(ジャーナリスト))
  • 1