総IT化時代の夜明け SMBの現場を追って

<総IT化時代の夜明け SMBの現場を追って>18.サンテク(上)

2005/03/07 16:18

週刊BCN 2005年03月07日vol.1079掲載

 中堅のコンピュータ流通卸、サンテク(岡山県岡山市、山田省三社長)は、流通卸の販売管理ノウハウとXMLウェブサービスなどインターネット技術を駆使して事業の多角化を進めている。

流通卸をベースに事業多角化へ

 サンテクは流通卸事業で、主要メーカーのPCサーバーやパソコンおよび関連する周辺機器ベンダー約100社の商材を扱っている。同社から商材を日常的に仕入れて販売している販売店は全国に約500社あり、販売店との取り引きはインターネットを使った受発注システムを早くから確立している。

 日本ヒューレット・パッカード(日本HP)やNECなどの製品に関しては、顧客企業の要望に沿ってカスタマイズを行う「コンフィグレーションセンター」を自社で運営。コンフィグレーションセンターでは多いときで月間1000台近いPCサーバーやパソコンのカスタマイズを手がける。

 販売店とのインターネットを使った受発注システムやカスタマイズサービス、異なるベンダーの商材を組み合わせて販売店に迅速に届ける仕組みなどがサンテクの流通卸事業における差別化の要素になっている。これらの差別化策を支えるのがサンテクが独自で開発した商品データベースやスムーズな受発注を行う情報システムだ。

 サンテクでは、これらITリソースを販売店のビジネスやサンテク自らが手がける直販ビジネスに生かしている。パソコンなどIT機器がコモディティ(日用品)化するなかで、市場の動きをより正確に把握するには「パソコンの販売台数だけ見ていては全体が見えない。インターネット上での取り引きなども含めた市場全体の動向に敏感になるべき」(山田社長)と考え、自社で複数のEC(電子商取引)サイトの立ち上げに踏み切った。

 現在では、コンシューマや法人顧客向けのECサイトが14サイト、販売店向けの流通卸のECサイトが2サイトの計16サイトを開設している。

 PCサーバーやパソコンなどハードウェア市場の成熟や価格競争の激化など、ビジネスの環境は依然として厳しい。こうしたなかで、サンテクの付加価値や競争力、収益力を総合的に高める施策が、複数のECサイトの立ち上げによる事業の多角化である。

 現在ある16サイトは、販売店向けのオンライン受発注のサイトから始まり、コンシューマ向けの総合ショッピングモール、女性・家族向けショッピングモール、IT機器販売のショップ、インターネットを使った家計簿、ソフトウェアのダウンロード販売、法人向けのウェブを使った給与計算サービスなど様々だ。

 サンテクグループの社員数約170人のうち、流通卸関連事業やソフト開発事業などを除いて、コンシューマや法人顧客向けのECサイトの運営に携わる社員数はわずか30人ほど。今年度(2005年5月期)の売り上げ見込みに占める構成比は、流通卸関連が過半数を占めるものの、「将来は売上構成比で両事業を半々にもっていく」(山田社長)と、既存の流通卸事業を伸ばしつつ、一般向けなどのECサイト事業の伸び率をさらに高めていく方針を示している。

 少ない人数で伸び率を高めるには業務の効率化が欠かせない。そこで着目したのが流通卸事業で商品情報を登録してあるオリジナルのデータベース「資料データベース」の存在だ。資料データベースには、パソコンの型番やCPUやメモリなどのスペックをはじめとする基本的な情報が蓄積されており、サンテクから商品を仕入れる販売店は、資料データベースの基本情報を参照しながら商材を仕入れている。昨年初めからこの情報を自社で運営するECサイトにも応用することで、サイト運営の効率化に取り組んだ。

 サンテクが運営するサイトのなかで、IT系の商材を扱うサイトは少なくない。パソコンオンラインショッピング「サンテクウェブショッピング」やサンテクが運営するパソコン販売店のウェブ「シーエス・ワン」などはIT系の商材がメインで、総合ショッピングモール「net横丁」や女性・家族向けショッピングモール「マム倶楽部横丁」でも一部IT関連の商材を扱っている。

 こうしたIT系の商品情報を登録するとき、これまでは各サイトを運営する担当部門が、それぞれ個別に入力していた。同じ商品の情報をそれぞれの部門が入力することもあり、重複による作業効率の低下が問題だった。これを解決するため、昨年初めからXMLウェブサービスを使って資料データベースからウェブ上へ情報を引き出す仕組みを開発した。資料データベースに登録してある商品情報は、瞬時に各ECサイトへ引用できるようになり、作業効率は大幅に向上した。

 資料データベースに登録してある商品情報は、基本的な項目に限られていることが多い。ECサイトを担当する部門は、基本的な商品情報にコメントを加えたり、商品画像を追加したりして、それぞれのサイトの特色を出していく。各部門が付加した情報は、関連のあるECサイトを運営している別部門とも共有できるようにすることで、商品情報のより一層の充実を図れるようにした。

 次回は、サンテクが運営するECサイトのより詳しい戦略を検証する。(安藤章司)
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