e-Japanのあした 2005
<e-Japanのあした 2005>25.CALS/ECアクションプログラム
2005/02/28 16:18
週刊BCN 2005年02月28日vol.1078掲載
公共事業の計画・調査から発注、施工、維持管理までを統合管理するCALS/ECの導入計画は、e-Japan戦略以前の1995年にスタート。96年度から始まったアクションプログラムでは、98年度までのフェーズ1で環境整備、01年度までのフェーズ2で電子入札・電子納品の導入、04年度までのフェーズ3で国土交通省直轄事業でのCALS/ECの実現を掲げてきた。すでに直轄事業では03年4月に電子入札を全面導入済み。当初のアクションプログラムは1年前倒しして04年3月に「次世代CALS/EC」構想が策定されるはずだったのだが、未だに陽の目を見ていない。
なぜ次世代構想がとん挫しているのか。最大の原因は、電子入札の導入後に増加してきたダンピング(不当廉売)受注の問題だ。もともと公共調達は最低価格で入札した業者が自動的に落札する一般競争入札が原則。紙の時代は入札参加希望者が増えすぎると事務処理できないなどの理由で発注者が入札参加者を制限する指名競争入札が常態化していた。しかし、電子入札の登場と、中尾栄一元建設相の贈収賄事件をきっかけに01年4月に施行された入札契約適正化法のタイミングが重なったことで、入札制度改革を進めて一般競争入札を増やす公共発注者が増加。同時に、国・地方の財政悪化による公共事業費削減で受注者の過当競争も一段と激化、結果としてダンピング受注の急増を招いた。
ダンピング受注は、電子入札そのものが悪いわけではなく、従来の制度を見直さずに電子入札を導入したのが原因なのだが、その頃からCALS/ECに対するブレーキがかかったとの印象は否めない。現状では電子入札や完成図面など工事図書の電子納品を実施しただけにとどまり、CALS/ECの本来の目的である公共事業の業務プロセス全体を通じた効率化・合理化、成果物の品質向上とコスト削減、透明性の確保まで踏み込めていない。「何のためのCALS/ECなのか」、「理想と現実のギャップが大きすぎる」との声が、建設業界だけでなく国土交通省内部からも聞こえる。
そこでカギを握るのが、古賀誠衆議院員など自民党議員らによって議員立法で法案提出されている公共工事品確法案だ。ダンピング受注によって手抜き工事が増え、公共工事の品質が低下することを防止するため、価格だけでなく、技術提案や過去の工事成績などの技術力評価を加えて受注者を選定しようというのが基本的な考え方である。工事成績など技術評価の導入は建設業者の“格付け”につながるため、談合体質が根深い地方ゼネコンで反対意見が強いと言われていたが、地方ゼネコン3万社で組織する全国建設業協会も今回は法案成立を後押し。技術評価を中立的に行う第3者機関の設置まで提案しているほどだ。
従来の価格による入札では、金額が同じであれば、技術的な裏付けがないダンピング価格か、施工実績を積むための戦略価格か、技術力によって実現した価格かを区別しなかったわけだが、技術評価が加われば同じ金額でも意味が異なってくる。その違いを判断して適切な発注を行うには、評価基準を含めて情報の透明性確保が不可欠だろう。「発注者がやり方を変えれば、現状でもCALS/ECは有効に機能するのに、なかなか変える決断をしない」(識者)との指摘もあるように、ポイントはCALS/ECを積極的に活用するとの決断を下すかどうかである。
前回紹介した経済産業省の情報経済・産業ビジョンでは、ITで社会・経済を「強く」するとの視点から、新しいモノ・サービスを提供していくための“プラットフォーム”が検討されていた。CALS/ECの次期アクションプログラムでも、改めて公共事業のプラットフォームと位置付けて、建設産業を含めて「強く」するためのビジョンを描いてみてはどうだろうか。
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