視点

日米で違うホームデジタルの展開

2005/02/21 16:41

週刊BCN 2005年02月21日vol.1077掲載

 毎年、CES(コンシューマエレクトロニクスショー)を取材していると、この展示会での最大のテーマである「家庭でのデジタルメディアの展開」は年々、日米では違う方向に行っていることが実感される。いちばん大きいのはCATV(ケーブルテレビ)の存在だ。日本では、地上放送が全国に行き渡り、CATVは補完の役割にすぎないが、アメリカでは、放送とは実質的にCATVのことだ。DTVは「地上」デジタル放送なのだが、実際にはCATVで取り扱ってもらわないと、絶対に普及しない。今年のCESで、主催者のCEA(米国家電協会)が2005年のデジタルテレビ市場は、04年の約2.8倍の2025万台に急拡大するとアナウンスしたのも、「ケーブルカード」という我が国のB-CASカードに似た個人情報収納カードが導入され、CATVでDTVを見られる環境が整うことを予測してのことだ。

 つまりCATVがニューメディアの行方を実質的に決めている。CATVが盛んだから、CATV上でできるサービスの開発も盛ん。今最もホットなのが、VOD(ビデオオンデマンド)だ。VODは10年ほど前から電話会社やCATVで何回も実験され、そのたびに時期尚早ということで失敗していたが、今回はリアリティがありそうだ。

 米国では、電話会社が今でもVODをトライしているが、勢いはCATVの方がいい。なぜならば、はじめからテレビをそのセットトップボックス(STB)で見ているわけで、そこにVODサービスが加わっても、モアチャンネル感覚で追加できるからだ。なかでも「パワーショベル・コンテンツ」が好評だ。直前のニュースなどのホットな番組をリクエストで再生するサービスで、スポーツの結果をすぐに知りたいニーズに応えている。

 米国では、あまりにSTBが普及したために、すべてのメディアがそこで扱われなければヒットしなくなった。前述したDTVはその一例だが、ハードディスクレコーダーのTiVo(ティーボ)も単体ではいまひとつだったが、CATVのSTBに採用されたら大幅に伸びた。映像、音楽、静止画を1つの機械で扱うというコンセプトは日本では流行らないが、アメリカではホームメディアセンターという形で、ケーブルSTBに内蔵され、人気を博している。なぜ、日本で受けているDVDレコーダーがアメリカではいまいちなのかの理由の大本も、その辺にありそうだ。
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