情報化新時代 変わる地域社会
<情報化新時代 変わる地域社会>第40回 静岡県富士市 パソコンを1人1台配備へ
2005/02/21 20:43
週刊BCN 2005年02月21日vol.1077掲載
同時に「メタフレーム」も導入 サーバーコンピューティングを実践
■総合計画でパソコン約1300台富士市が職員へのパソコン配備を本格化させたのは2001年度から。01年度から05年度までの5か年計画「第4次富士市総合計画」で、事務系職員に対し1人1台のパソコン装備を開始した。計画では約1300台。もちろん本庁だけではなく、市立の学校や出先機関を含め132か所にもパソコンが行き渡ることになった。
ここで問題となってくるのが、これらのパソコンを「誰が」面倒を見るかということ。「情報政策課で担当しているのは4人。この少人数でOSの脆弱性を解消するためにパッチをあてたりという保守作業は時間的にも不可能」(深澤安伸・富士市役所総務部情報政策課システム開発担当主査)ことから、「ベンダーに対して、保守管理を容易にするツールはないだろうか」(同)と相談した。
そこで出てきたのが、まだ導入事例が少なかったシトリックス・システムズの「メタフレーム」だった。行政でのシステム導入では、「事例が少ない」というのがネックになりがち。しかし、「東京大学での導入事例などを持ち出して、導入にこぎ着けた」(同)という。
第4次富士市総合計画の中でパソコンを大量導入することを決めていたが、年度ごとに段階的にパソコンおよびメタフレームサーバーの導入を進めるという方法を採った。まず、計画がスタートした01年度は庁舎に24台のメタフレームサーバーを置き、端末となる400台のパソコンを導入。02年度は480台のパソコンと20台のメタフレームサーバー、03年度には330台のパソコンと10台のメタフレームサーバーを導入し、職員1人1台体制ができた。
その一方で、ネットワークインフラの高度化も進めた。それまでのネットワーク環境は、99年度から利用開始していた64 KbpsのISDN(総合デジタル回線網)という環境。パソコンを使って、庁内でも出先でも同様の環境で使用するために、03年度に10MbpsのNTTの「ワイドLANプラス」を活用しネットワークの高速化を図った。こうしたインフラ整備とともにメタフレームの導入で、「どこにいてもローカルで情報システムを活用しているような環境ができた」(同)という。
■メンテナンスはサーバー側で実施
富士市の情報システムは、NECのメインフレームを使ったホスト系システムと、クライアント/サーバー(C/S)システムに分かれる。住民記録や市民税、固定資産税、国民年金、国民健康保険をはじめとした業務がホスト系で動いており、財務会計、戸籍、福祉総合情報システムなどがサーバー系の業務になる。ホスト系からサーバー系に移管される業務もあり、すでに市営住宅システムが移行したほか、来年度には上下水道システムもサーバー系に移る予定になっている。もちろん、各パソコンからホスト系にはエミュレータを介してアクセスすることが可能だ。
富士市の場合、もともと業務システムの開発は自前で行ってきた。職員がCOBOLを使ってプログラムを書いてきた。このスキルはパソコンの時代になっても生きている。富士市が活用しているグループウェアは、独自に開発したものだ。
深澤システム開発担当主査は、「パッケージを使えば、という意見もあった。試験的に導入したグループウェアは良いと思ったが、自由度が低いのが欠点だった」と語り、メニューが用意されたなかでの活用ではなく、業務の実情に合わせたオリジナルを作ることにしたのだという。こうした柔軟な発想が、事例の少ないメタフレーム導入にもつながったのだろう。
メタフレームの導入について深澤主査は、「実は導入コストから言えば、メタフレームは非常に高いという感じを受けた。しかし、サーバーを1か所に集めておくことができ、パッチをあてるのもアプリケーションの追加もサーバー側で済む。システム担当の増員が不要だった」と、導入効果をアピールする。
他の自治体から事例説明を求められることも多くなった。そのための資料によると、初期導入費用は01年度分400クライアントの月額リース料が400万円弱、02年度分480クライアントの月額リース料も400万円強という。決して安い金額ではないが、約1300台のパソコンのメンテナンス負担などを考えれば「人件費などの固定費のプラスは無い」(同)という点でコストの上昇は防げているという。
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