未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業 

<未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業>15.エイ・ジー・アイ

2005/02/14 20:43

週刊BCN 2005年02月14日vol.1076掲載

感情を認識するコンピュータ

 1999年設立のソフト開発ベンチャー、エイ・ジー・アイ(AGI、光吉俊二代表取締役)が開発するソフトは、音声の抑揚からコンピュータが人の感情を認識し、その感情に合わせた適切な対処方法を導き出すためのツールだ。

 デジタル化された音声データをAGIのソフトを通すことによって、コンピュータが人の感情を判断することが可能になる。これを生かして受付システムやロボット、情報家電などに組み込めば、コンピュータが人の感情を把握して適切な対応を行うことができる。つまり、「コンピュータと人との新たなコミュニケーションが実現する」(光吉代表取締役)というわけだ。

「グローバルに見てもAGIしか手がけていない領域」と、光吉代表取締役は自社技術の斬新さと先進性を強調する。

 光吉代表取締役はAGIを設立する以前から、“感情を持つコンピュータ”の必要性を感じ、独力で開発に着手。開発期間10年をかけてこのソフトを作り上げた。数回のバージョンアップを重ね、今では人の感情を興奮状態、平常時、喜怒哀楽の6種類に識別することができ、「人と同等の感情認識率」(光吉代表取締役)まで精度を高めた。

 まだ知名度が低く市場が立ち上がっていないなかで、自社だけで市場を切り拓くことは、大きなチャレンジ。そんななか、昨年3月上旬にはロボット開発に取り組む日本SGI(和泉法夫社長兼CEO)に認められ、業務および資本の両面で提携した。

 日本SGIの資本参加で潤沢な研究開発費を手に入れ、さらに日本SGIがAGIの総販売代理店となったことで、販路が飛躍的に広がった。

 AGIのソフトは、ITベンダーや大学の研究機関などに、個別でその技術やカスタマイズソフトを提供する販売モデルがメインだった。しかし、「まだ知名度が低い。まずは知ってもらうことが重要」(光吉代表取締役)として昨年9月、ITベンダーが同社の技術を取り込んだ独自のアプリケーションやシステムを開発できるように、安価な開発ツールソフト「ST SDK Ver.2.0」をリリースした。

 引き合いは多く、すでに大手のITベンダーを中心に約20社・団体から受注した。また、自社でもアプリケーション開発を始め、日本SGIが販売していくことも検討している。

 光吉代表取締役は、「グローバルで見ても競合はない。日本SGIとの関係を生かして06年には世界で販売していく」としており、世界市場にも打って出る構想だ。(木村剛士)
  • 1