大遊泳時代

<大遊泳時代>第56回 IT教育はコミュニケーション教育である

2005/02/14 16:18

週刊BCN 2005年02月14日vol.1076掲載

松下電器産業 役員 前川洋一郎

 教育現場のIT化に熱心な大阪の初芝学園の椋本彦之理事長にお聞きした。

 2003年7月から取り組みをスタートし、ちょうど1年経って相当な成果があがってきたそうである。

 その場のとりあえず形を作るハコモノ主義、なんでも揃えてみる1円入札、披露直後だけで後は使わないAV─LL、ではない。先生が、生徒が、父兄が、地元がIT化でどうなるかを一緒に探究した結果である。

 最初は、先生も「何をしていいのやら、わからない…」とのことであった。

 3か月後、プロが指導して、ホームページ(HP)を立ち上げて、「HP基本講座を先生、生徒に根気よく実施」。

 6か月後、学校内にパソコン部発足。そして、保護者サイトがオープン、学校通信を載せる。配布物もデータベース化。

 10か月後、生徒がHP作成にトライ。自主サーバーで自主管理。さらには音声による先生・生徒のメッセージ発信。携帯動画による学校行事の紹介。

 1年半経って、学校全体でITを育む風土ができ、PTA+地域のコミュニケーションツールとなってきた。結果として1人ひとりのITリテラシーが向上し、助け合いの気運もできてきた。今では、アクセスも増加の一途である。学校での先生・生徒の挨拶も明るくなったとのこと。

 IT教育は、何も教材ソフトやパソコンをムリヤリ使いこなす、1対Nのeラーニングではない。ITを進めるためにフェイス・ツー・フェイスのコミュニケーションから教育の実をあげていくことにある。あくまでITはツールである。

 こういったことを地域も巻き込んで、もっと進めれば、マナー教育、言葉遣い、少年犯罪、学校崩壊を救えるのではないか。少し飛躍しすぎかもしれないが。

 ねえ、ワトソン君!「IT化のコストはどうするのかね?」。「それが学校経営の妙ですよ!!」。
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