総IT化時代の夜明け SMBの現場を追って

<総IT化時代の夜明け SMBの現場を追って>15.アタックス(上)

2005/02/14 16:18

週刊BCN 2005年02月14日vol.1076掲載

 経営コンサルタント会社のアタックス(丸山弘昭社長、愛知県名古屋市)は、中堅・中小企業(SMB)に最適なITを活用した経営支援サービスに力を入れている。自ら先行してSMBに適したITを導入し、運用ノウハウなどを身につけてから、顧客企業に提案する手法を重視する。自社導入することでITの活用方法などを研究し、顧客企業がより効果的に役立てられるようにするめだ。

ITを活用した経営革新を実践

 財務会計や人事給与など、主にバックオフィス分野のコンサルティングを得意とするアタックスグループでは、ITを活用したバックオフィスの効率化に取り組んでいる。SMBが大きく伸びるには、バックオフィスを極限まで効率化し、「本業に専念することが大切」(丸山社長)と考える。製造業なら製造、販売業なら販売と、本業に経営資源を集中できる環境作りが成長の早道だと分析する。

 バックオフィス効率化には、ITの活用が不可欠だ。アタックスグループでは、自らIT武装することで、ITを活用したバックオフィスの効率化に努めてきた。

 その道具として選んだのは、SMB向けERP(統合基幹業務システム)として定評があるオービックビジネスコンサルタント(OBC、和田成史社長)の「奉行シリーズ」である。近年では、奉行シリーズをベースに、顧客企業のバックオフィス分野の業務の一部をアウトソーシングするサービスの拡大にも力を入れている。

 顧客企業がハードウェアや奉行シリーズのパッケージソフトを購入しなくてもASP(アプリケーションの期間貸し)で使えるサービスメニューも2001年から追加した。このサービスを使えば、手元のパソコンからアタックスグループが運営するサーバーに接続し、奉行シリーズの機能を遠隔操作で利用できる。

 遠隔操作の仕組みは、同分野のソフトウェアを開発しているシトリックス・システムズの「メタフレーム」を採用した。遠隔操作ができるソフトウェアのメタフレームを使えば、まるで自分のパソコンに奉行シリーズがインストールされているかのような、快適な操作性が実現できる。

 すでに約50社がASP方式で奉行シリーズを活用しており、今年度(05年12月期)末までに100社、3年後には数百社のASP方式による奉行シリーズの利用を見込んでいる。これまでは、認知度の低さなどから導入スピードが上がらなかったが、今年から来年にかけて「大幅に利用数が増える」(丸山社長)と手応えを感じている。このため04年6月には演算速度の速い64ビット型のサーバーを自社で導入した。

 ASPサービスに力を入れる背景には、バックオフィス分野のアウトソーシングに加えて、もう1つ理由がある。それはアタックスグループのビジネスの全国展開である。アタックスグループの顧問先数は、SMBを中心に約1200社。名古屋市に本社を置いている関係から、東海地区の顧客が全体の約8割を占め、その他2割が首都圏や関西圏などが占める。

 これまでは東海地区を中心にビジネス展開してきたが、距離や時間の制約を受けないASPサービスの特性を最大限に活用し、全国へビジネスを展開する方針を示す。場所や時間の制約を、ITを使って突き崩し、ビジネスに役立てる。これにより得られたノウハウは、顧客企業に還元していく。

 丸山社長は、「経営やビジネスといった社会科学的な仕組みは、閉じた実験室では検証できない性質のものだ。当社自らがSMBの経営やビジネスの実験材料になることで、ITを活用した最適な経営コンサルティングができる」と、経営に役立つIT導入を積極的に取り入れていく姿勢を示す。

 アタックスグループは、税理サービスを中心とするアタックス税理士法人、株式公開支援や事業再構築、ベンチャー企業支援などの経営コンサルティングサービスを中心とするアタックス・ビジネス・コンサルティング、ASPサービスやアウトソーシング、社外CFO(最高財務責任者)などを中心とするアタックス戦略会計社の3つの事業子会社から構成されている。アタックスはその持ち株会社となる。

 顧客企業が必要としているサービスを、それぞれ個別のサービスを専門としている子会社が担当する仕組みだ。

「従来型の企業経営は、本業としている業務からバックオフィスまで、すべて自社で完結する垂直統合型が主流だった。しかし、今後は外部へアウトソーシングした方が効率化できる業務については、パートナー企業と連携する水平分散型への移行がさらに加速する」(丸山社長)とし、アタックスグループの各サービスメニューは、こうした水平分散型の経営に対応したものだと話す。

 そのアタックスグループ自身も、IT分野はビジネスパートナーであるOBCなどと密接な連携を実現している。次回は、ITパートナーであるOBCの視点で分析する。(安藤章司)
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