e-Japanのあした 2005

<e-Japanのあした 2005>20.総務省、テレワーク導入

2005/01/24 16:18

週刊BCN 2005年01月24日vol.1073掲載

 総務省が今年1月からテレワークの試行を開始した。情報通信政策局の若手官僚4人と総務省CIO補佐官2人を対象に2月末まで実施して、情報セキュリティ対策を中心に本格導入に向けた課題を整理する。2005年度は参加人数を増やして検証を進めながら、人事院や厚生労働省と協力してテレワークに関する法・制度を整備したうえで、06年度に総務省全体での実施をめざす計画だ。(ジャーナリスト 千葉利宏)

 テレワークは、e-Japan戦略IIの先導的7分野の1つ「就労・労働」の中の重要な政策と位置づけられ、「2010年までに適正な就業環境の下でのテレワーカーが就業人口の2割となることをめざす」との目標が掲げられている。「情報通信手段を週8時間以上活用して、時間や場所に制約されない働き方」とのテレワークの定義に当てはめれば、少子高齢化が進むなかで現在約6%のテレワークの普及率も着実に高まっていくと考えられる。事前に内閣官房が行ったアンケート調査でも「総務省職員全体の7割近くがテレワークへの参加に前向きだった」(出口岳人・情報通信政策局情報流通振興課情報流通高度化推進室課長補佐)ほか、実験開始後、他の中央省庁や地方自治体からも問い合わせが相次いでおり、潜在的なニーズはかなり大きいと言えよう。

 今回導入したシステム構成は、職員の自宅からプライベートIP網でセキュリティゲートウェイを設置した霞ヶ関データセンターに接続。ここにオンラインテレビ会議とチャットなどを行うメッセンジャーのサーバーを設置して、そこからプライベートIP網を通じて総務省LANに接続する。データセンターの設備に約500万円、職員6人へのパソコン、携帯電話などの貸与で500万円弱と合計1000万円弱の初期投資がかかったが、「セキュリティを確保しながらテレワークの導入費用を下げることは可能だろう」と見て、費用を含めたテレワークシステム構築に関する検討も進めているところだ。

 また、テレワークでできる仕事も、現状ではかなり限られているイメージがあるが、「総務省の場合でも“国会対応”など緊急性のあるものを除けば、ほとんどの業務でテレワーク対応が可能であることを証明したい」と、活用方法の裾野拡大にも取り組んでいる。これらの検討を踏まえて、テレワーク分野で連携している総務省、厚生労働省、経済産業省、国土交通省の4省で、今年夏には民間への普及に向けた「テレワーク導入ガイドブック」を作成する計画だ。

 今後の課題は、テレワークを社会にどう定着させていくかである。テレワークは労働関係法の中にまだ明確に位置づけられておらず、厚労省ではテレワークに裁量労働制を適用する準備を進めていると言われるが、具体的にどのような労働評価を行うのが適切なのかは検討が必要だろう。同様に、公務員にテレワークを適用した場合の評価や査定についても人事院と協議が進められている段階だ。セキュリティを中心に日本の住宅事情も考慮する必要があるだろう。

 最も重要なのは、テレワーク導入効果をどのように引き出していくか。今回の試行に参加した総務省職員も通勤時間が片道1時間以上というケースも多く、長時間通勤の負担軽減や交通費の削減などの効果が期待でき、テレワークの参加人数が増えれば交通費の削減効果でテレワークシステム導入費用をカバーできると試算する。しかし、従来の組織や労働形態のままで、テレワークに移行しても得られる効果はそれほど大きくないだろう。少子高齢化が進むなかで、テレワークをどのように活用していくべきか、議論を深めていく必要がありそうだ。

 今回の試行状況は「テレワーク日記」で2月末まで公開中(http://teleworknikki.no-blog.jp/teleworknikki/)。

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