大遊泳時代

<大遊泳時代>第52回 UDとRTの融合を

2005/01/17 16:18

週刊BCN 2005年01月17日vol.1072掲載

松下電器産業 役員 前川洋一郎

 UD(ユニバーサルデザイン)が今、大モテである。何の事はない。使いやすいように工夫した優しいデザインのことである。江戸の昔から道具類はそのような工夫がなされてきた。

 それが戦後、高度成長でデザイナーとお客様との距離ができてしまったこと、大量規格生産にはまってしまったことが原因といえば過言だろうか。お風呂へお年寄りを入れると、痩せていても意外と重くてびっくりする。車イスの玄関の出入りも面倒。しかし最近は、衣類の出し入れが簡単な「斜めドラム式洗濯機」、低い玄関、部屋の仕切り、トイレも手すり付になり、シャワーが座ったままできる「座シャワー」、街でも目の不自由な方への配慮も増えてきた。そして、身内に寝たきり認知症老人がいると痛いほどそのありがたさがわかる。

 家電製品協会はUD配慮の家電製品の普及に力を入れ、ホームページでPRをしているが、東京のパナソニックセンターで教えられたUDの6要素とは、①分かりやすい表示・表現、②理解しやすい操作、③楽な姿勢と動作、④安心・安全への心配り、⑤移動と空間への心配り、⑥使用環境への心配り──とあった。

 ところで、松下電器産業は高齢化社会に需要が見込まれる家事代行や補助など、暮しに役立つ道具型ロボットを「メカノーグ」と名付けてRT(ロボットテクノロジー)開発を進めている。

 1990年代から各工業会が身障者高齢者への「アクセシビリティ指針」作りとJIS化を進めている。AV(音響・映像)─IT業界もUDにもっと取り組まねばならない。この際、UDとRTの取り組みを融合させてはどうだろうか。要は国を挙げて1日も早くRT+UDの新領域を完成して欲しい。

 ねえワトソン君よ、「ロボットとUDもいいが、まずは家の中のリモコンを何とかしてほしいね」。「それよりも、あなたがリモコンされていることが問題ですよ」。
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