e-Japanのあした 2005

<e-Japanのあした 2005>19.u-Japan政策と工程表(下)

2005/01/17 16:18

週刊BCN 2005年01月17日vol.1072掲載

 2010年のユビキタスネット社会の実現をめざして総務省が今年からスタートしたu-Japan政策で重要な役割を担うのが工程表である。成果目標は総務省だけで達成できるものではなく、他省庁を含む民産学官が工程表によってビジョンと情報を共有しながら取り組むことが不可欠だ。ITベンダーも工程表にどう対応していくかが問われることになる。(ジャーナリスト 千葉利宏)


 総務省のICT(情報通信技術)関連予算は、年間1400億円規模。政府の財政状況が厳しいなかでも、引き続き必要なICT関連の予算を確保していく方針だが、今後はu-Japan政策を強力に推進していくために、成果目標の達成に寄与する施策により重点的な予算配分が行われる可能性は高い。

 「u-Japan政策のなかでも重要なのは無線分野だ」(今川拓郎・情報通信政策局総合政策課課長補佐)。総務省は、これまでブロードバンドの基盤整備に力を入れ、特に地域格差を解消するためにブロードバンドの整備が難しい自治体には補助金による支援を行ってきた。しかし、05年度予算では、総務省が推進役となってきた三位一体改革での補助金削減に配慮せざるを得ず、格差が深刻化するなかでも、ブロードバンド整備の十分な予算要求は困難だったという。

 u-Japan政策で最大の焦点となるのは、やはり「2010年までに国民の100%が高速または超高速を利用可能な社会に」の目標をどう達成していくか。今後も4兆-5兆円規模の投資が必要と予想されるだけに、有線と無線を区別せずにブロードバンド環境の整備を推進していくための新たな支援策の検討が進められているもようだ。

 一方、ICT利活用の面で「国民の80%がICTに安心感を持ち、かつ課題解決に役立つと評価する」との中長期の目標を達成するには、少なくとも国民の80%以上が「ICTを活用したサービス」を利用することが前提となる。工程表では利用に関する成果目標として「電子商取引の市場規模を倍増」、「コンテンツの市場規模を2倍に」、「高齢者のネット利用率を3倍に」、「電子政府・電子自治体における利用者満足度の向上」、「遠隔医療の件数を5倍に」などを掲げた。総務省でも当面「ICTを活用したサービス」を牽引していくのは、電子商取引とコンテンツ配信と想定しているようだ。世代別インターネットの利用状況をみると、10-40代はすでに80%を超えているだけに、市場の規模拡大のためには、電子決済などの利用環境の整備をさらに促進していくことが必要だろう。

 一方、50代は6割だが、60代以上は2割にとどまっている高齢者のネット利用率の向上は今後の課題だ。現在50代後半の団塊の世代が2010年には60代を迎えているため60代以上のネット利用率も大きく上昇するのは間違いないが、3倍の6割を達成するには端末のユニバーサル化は不可欠だろう。また、ネットを利用しない高齢者も、医療分野でのICT化が進めばメリットを受けることになり、成果目標にも遠隔医療の利用拡大が盛り込まれた。総務省では今後、厚生労働省に働きかけてビジョンを共有していきたい考えだ。

 工程表には、安心・安全に関する成果目標も多く盛り込まれた。調査によるとネット利用の不安・不満は1位個人情報保護、2位ウイルス、3位電子決済の信頼性となっており、電子商取引市場が拡大すれば、さまざまなトラブルが増えてむしろ不安・不満が一時的に高まると覚悟する必要もあるだろう。サービス普及に伴って表面化してくるであろう問題に、民産学官が協力して柔軟に対応できるかどうかも、成果目標の達成に向けて重要な課題となりそうだ。
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