e-Japanのあした 2005

<e-Japanのあした 2005>18.u-Japan政策と工程表(上)

2005/01/10 16:18

週刊BCN 2005年01月10日vol.1071掲載

 総務省は、昨年5月に公表した「u-Japan構想」を実現するための「u-Japan政策」をまとめ、政策ごとの成果目標とスケジュールを明記した工程表を策定した。2010年のユビキタスネット社会の実現に向けて、総務省のICT(インフォメーションコミュニケーションテクノロジー)政策の全体像を示した。今後はこれに基づいて毎年夏に策定している年次計画「ICT政策大綱」で施策を具体化するとともに、PDCAサイクルによる評価も実施して施策にフィードバックしていく考えだ。(ジャーナリスト 千葉利宏)

 01年1月に策定されたe-Japan戦略Iでは、「2005年に世界最先端のIT国家となる」との大目標を掲げ、情報通信インフラ、電子商取引、電子政府、人材育成の4重点分野で基盤整備に取り組んできた。この4年でブロードバンドや電子商取引の普及も急ピッチで進み、“キャッチアップ”の段階は終えつつある。今後は“フロントランナー”として世界のICT社会をリードしていかなければならないことから、新たな目標を設定した上で必要な政策パッケージを用意し具体化していく政策手法を導入。民(市民、利用者)産(産業界)学(教育研究機関)官(国、地方自治体)の役割分担を明確化し、連携を強化するため2010年までの工程表を策定した。

 総務省は、u-Japan政策に3つの基本軸を据えた。(1)“いつでも、どこでも、何でも、誰でも”つながる「シームレスなユビキタス基盤の整備」、(2)少子高齢化、地球環境など「21世紀の課題解決にICTを利活用」、(3)誰もが安心して使える「ICTの利用環境整備の抜本強化」──である。この3つの基本軸ごとに中長期の目標を掲げ、(1)と(2)ではそれぞれ4つの重点戦略、(3)では21の優先課題を設定して、それに対応した個別の成果目標と政策パッケージをまとめるという全体構成となっている。

 最初の(1)で掲げた目標は「2010年までに国民の100%が高速または超高速を利用可能な社会に」。e-Japan戦略Iの目標は「高速3000万世帯、超高速1000万世帯が利用可能」だったが、今後のユビキタス環境を実現するため100%の達成を目指すことにした。ポイントは、有線・無線の別を特に意識しない目標とした点。有線だけでなく、無線も積極活用しながら基盤整備を進めていく方針だ。

 次の(2)では「2010年までに国民の80%がICTは課題解決に役立つと評価する社会に」。(3)の目標も「2010年までに国民の80%がICTに安心感を得られる社会に」とし、両方に“80%”という数値を盛り込んだ。この数値は具体的な数字を積み上げたわけではないが、「国民の“大半”がICTに対して、そうした実感を持つ、と言う場合に、60%では不十分で、80%は必要だろう」(情報通信政策局総合政策課・今川拓郎課長補佐)との考え方を表現したと言える。

 今後、ICTの利活用を本格的に促進していく上で重要となる(3)の利用環境整備では、不安解消に向けた具体策「ICT安心・安全21戦略」も策定した。利用環境整備のテーマとしてプライバシー保護、情報セキュリティ、電子商取引など10分類を設定して、各10項目、合計100項目の具体的な課題を提示。これを有識者アンケートにかけて、社会に対する影響の度合と、対応の未熟さの度合の2つの視点から21項目を抽出、優先課題として取り組む。この優先21課題と(1)と(2)の8重点戦略、さらに横断的なテーマの国際戦略と技術戦略を加えた合計31項目について今後取り組む政策と成果目標を示したのが工程表だが、単につくっただけでは意味がない。民産学官がそれぞれ工程表をどう使いこなしていくかが重要となる。
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