総IT化時代の夜明け SMBの現場を追って
<総IT化時代の夜明け SMBの現場を追って>9.IGLグループ(上)
2005/01/03 16:18
週刊BCN 2005年01月03日vol.1070掲載
顧客密着度の高さが強み
70年代初めに米カリフォルニア州に本部を置く福音主義の教会を支援している団体「国際福音連盟」(インターナショナル・ゴスペル・リーグ=IGL)から支援を受け、学校法人IGL学園を74年に設立。その後、学校法人に加えて社会福祉法人や医療法人、宗教法人、株式会社などさまざまな法人に属する団体や企業、施設を開設して現在に至っている。今ではIGLグループ全体で36の事業所、約680人の職員を擁するグループに発展した。このIGLグループが「最も信頼できる」(IGLグループの沖田英司・本部企画室長)ITパートナーとして選んだのが富士通サポート&サービス(Fsas、前山淳次社長)である。
IGLグループとFsasとの最初の出会いは、介護保険システムの商談だった。00年4月、介護保険法の施行に伴ってIGLグループでは介護保険システムが必要となり、Fsasに発注した。以来、Fsasではサービス・サポートの提供や、IT利活用の提案を積極的に行い、03年10月にはグループウェアによる業務改善を実現した。
介護保険システムを導入する以前のIGLグループのIT投資は、それほど活発なものではなかった。だが、Fsasが保守サービス業務の一環としてIGLグループへの訪問を繰り返していくうちに、ITを活用した業務改善の相談を持ちかけられるようになった。顧客へ業務改善を提案したり、逆に顧客からITを活用した業務改善の相談を持ちかけられるようになるには、何よりも“顧客への密着度”の高さが不可欠である。
Fsasは、保守サポート業務で、頻繁に顧客先に担当者が訪問している。強力な営業部隊を持たないFsasは、こうしたサポート業務の担当者が、顧客先の業務改善の余地を観察し、積極的にITを活用した改善提案を行っている。こうした活動ができるのも、Fsasの充実した保守網が背景にあるからである。Fsasの中国地区における拠点数は計7か所。この拠点網は富士通グループのなかで最も充実している。
拠点の多さを生かして、顧客からは“何か聞きたいことがあれば、すぐに来て親切に説明してくれる”と大きな信頼を得てきた。IGLグループには、専門知識を持った技術要員が何人も詰めている本格的な情報システム部門があるわけではないため、技術的な問題が発生したり、新しい情報システムについて検討する必要が発生した時は、すぐにFsasの担当者が駆けつける。このフットワークの良さが次の改善提案から受注に結びつく基盤となっている。
IGLグループを担当するFsas西日本本部中国支社では、昨年度(04年3月期)、管理職が自ら顧客先に出向く“顧客訪問活動”を展開した。この活動は、「IT商材を売り込むものではなく、顧客の業務改善を提案する」(内田誠二郎・Fsas西日本本部中国支社長)ことを目的とした。このため、経験値の高い管理職クラスの社員が顧客先を訪問し、顧客の業務改善を提言。岡山、広島、山口、鳥取、島根の各県を管轄する中国支社だけで、この期間に約1300社の顧客を訪問した。
今年度(05年3月期)は、業務改善を提案した約1300社の中から約700社の重点顧客を絞り込み、さらに踏み込んだ提案に力を入れている。今年度は中国支社の売上高見込みは前年度比5%増を見込んでおり、「管理職による顧客訪問、提案活動が数字に表れている」(内田中国支社長)と、顧客密着度を高めるための積極的な取り組みが、厳しい経済環境のなかでプラス成長への道筋をつけられたと話す。
地域の中堅・中小企業のIT化は、IGLグループも含めて、まだこれから大いに発展の余地がある。Fsasでは、昨年10月1日付で富士通の100%子会社となり、富士通グループにおける保守運用サービス体制の中核企業として、同サービスの強化推進に取り組む。
Fsasの内田中国支社長は、「安心、安全、安定をキーワードにサービス・サポートの拡充に力を入れる」と、これまで以上にFsasの本業であるサービス・サポートを強化する方針を示す。Fsasのこうした取り組みが、地域の中堅・中小企業の需要を敏感に捉え、IT利活用の推進に役立っている。
次回は、IGLグループがITを導入し、どう変わったのかを検証する。(安藤章司)
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