コンテンツビジネス新潮流

<コンテンツビジネス新潮流>8.プロデューサー機能がビジネスを最大化

2004/12/20 16:18

週刊BCN 2004年12月20日vol.1069掲載

 1年ほど前、ある大学で講演を行った際、質疑応答の時間に学生から次ような意見が出た。音楽は、聴きたい曲は決まっているのに、CDもネット配信の料金も高すぎレコード会社は儲けすぎている、という主張である。(久保田 裕 社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)専務理事)

 これに対して私は、こう答えた。レコード会社は、数多くの楽曲の中から曲を選び、演奏家をデビューさせ、みんなが欲しいと思う曲を提供しており、そもそもレコード会社がなければ、みんなが欲しい曲を選ぶことさえできないはずだ、と。

 レコード会社に限らず、あらゆるコンテンツビジネスには、プロデューサー機能があり、目利き機能がある。こうした機能がなければ、音楽にしろ他のコンテンツにしろ、欲しいものを見つけるために大変な手間がかかるだろう。

 音楽などダウンロードで入手できるコンテンツの背景には、CDなどパッケージとして流通するコンテンツがあるのだ。

 一方で、ネットならではの機能を使い、コンテンツを知ってもらう方法が提案され始めている。

 例えば、アマゾンの「この本を買った人はこんな本も買っています」という推薦機能やカスタマーレビューもそうだろう。また、musicmatchという音楽サイトでは、アーティストが、影響を受けた別のアーティストを挙げるなど、同じジャンルの音楽を探しやすくなっているそうだ。

 インターネットの匿名性の反動からか、実社会の人脈をベースにした、いわゆるソーシャル・ネットワーキング・サイトも流行している。

 このソーシャル・ネットワーキング・サイト大手のmixiでは、映画や音楽、本などを紹介するページもある。直接の友人が強く奨める映画なら見てみようかという気にさせられる。

 このようなネット上で完結する紹介、推薦システムが発達しても、コンテンツ流通がネットだけで行われるようにはならないし、そうするべきでもないと考えている。

 店頭などで流通する旧来型のパッケージと、ダウンロードなどによるノンパッケージ、それに、ここから派生するキャラクターのライセンス、さらにはコンサートなどの実演と、あらゆる手段を総動員し、これらを組み合わせ全体のビジネスを最大化することが、著作権ビジネスの要諦である。それぞれの手段で様々な革新と工夫は必要だろう。

 それらを踏まえ、コーディネートするプロデューサーこそが著作権ビジネスには必要なのである。
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