未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業 

<未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業>7.ビートック

2004/12/13 16:18

週刊BCN 2004年12月13日vol.1068掲載

100人の中国人開発者が武器

 日本の受託ソフト開発企業の強力なライバルといえるのが、インドや中国のソフト開発企業だ。開発者の人件費が安いことに目をつけて、中国やインドのソフト開発企業を活用するITベンダーは増えている。

 なかでも中国は、インドに比べて日本語を話せる開発者が多く、距離も近いことから日本企業が相次いで中国企業と協業したり、開発子会社を設置したりする傾向が強い。

 だが、人件費の安い海外企業に発注先を変えれば、単純に開発コストが下がるわけではない。日本の開発会社に発注する場合と異なり、コミュニケーションの欠如や仕様書の曖昧さから不具合が発生し、開発をやり直さなければならなくなる確率は高い。打ち合わせのために頻繁に日中を往復すれば交通費もかかり、電話やファクシミリで済ましても通信費用はかかる。

 海外の開発者を利用しようにも、海外企業との“付き合い方”を知らなければ、人件費が安くても、思うようにコストカットできないのが現実だ。

 ビートック(堀口大典社長)は、中国へのオフショア開発の需要が強いことに目をつけ、中国に約100人の開発者を確保した子会社を設立。日本国内で受託ソフト開発案件の営業を行い、中国でのオフショア開発をメインの事業に据えている。

 エンドユーザー向けに開発することもあるが、中心は大手ITベンダーからの下請け。現在は、ソフト開発の外注先として中国を熱心に強化している野村総合研究所からの受注額が全体の約半分を占め、それ以外でも顧客はITベンダーがほとんど。

 堀口社長は、「(オフショア開発の活用は)大手IT企業だけだったが、最近では中堅ITベンダーも中国に目を向けるようになった」という。

 オフショア開発では、コミュニケーション不足からの開発案件の長期化、不採算化の防止が最大の課題となる。ビートックでは、日本と中国の開発者との間でプロジェクト管理を手助けする橋渡し役となるシステムエンジニア(SE)「ブリッジSE」の育成には最も力を入れており、現在は約15人のブリッジSEを確保している。開発には中国語や中国の開発習慣に精通した日本人SEを必ず1人は参加させることを徹底する。

 現在は、業務アプリケーション開発が中心になっているが、今後は「安定的な需要が見込める」(堀口社長)組み込みソフト開発事業への参入を計画している。(木村剛士)
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