大遊泳時代

<大遊泳時代>第48回 IT革命で電子図書館はどうなる?

2004/12/13 16:18

週刊BCN 2004年12月13日vol.1068掲載

松下電器産業 役員 前川洋一郎

 調べものがあって久しぶりに公立図書館に行った。入口にロッカーがあって、鞄は勝手に持ち込めないという。図書の盗難防止のためとのこと。今度は別の中央図書館に行くと、入口にCDショップにあるような大きなアンテナがある。図書を無断で持ち出そうとすれば、背ラベルの裏にセンサーが仕込んであって、警報機が鳴る仕掛けである。

 聞いてみると、図書の盗難、紛失が絶えないという。情けないことだ。それでも盗難が減ればいい、まだまだ図書管理は相変わらずバーコードであるが。都会よりもむしろ、千葉県富里市立図書館、福岡市ちくほ図書館といった地方の図書館で無線ICタグ(RFID)の実験が進んでいるようだ。ネックはRFIDの単価の高さで、10円以下になれば爆発的に普及するという。早くIT管理の図書館になって欲しいと思ったが。

 書籍を探しまわって、おもむろに紐解くと、なんと今度は読みたいところがごっそり破り取られている。開いた口、いや表紙がふさがらない。係員に尋ねると、もうデータをすべて電子化して電子図書館にするしかありません、という。

 しかし、すべての書物が電子化されれば、ゲーム育ちの世代や研究者などにとって、検索など便利の極みである。といっても著作権保護をどうするか、誰がデジタル化するのか? 課題は山積で今のところ夢のまた夢。しかも紙の手触り感、一覧性に勝るものはない。そしてお年寄り、子供にとってデジタルデバイドにならないか。いっそのこと、雑誌・新聞の類から電子ブックを積極的に導入してはどうかな。

 ねえ、ワトソン君!「よく見ると、図書館はホームレスらしき人が多いね。どうしたものかな」。「いやいや、向こうから見ると、リストラでのオフィスレスと見られてますよ!!」。
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