情報化新時代 変わる地域社会
<情報化新時代 変わる地域社会>第31回 秋田県秋田市(上) 行政情報を積極的に提供
2004/12/13 20:43
週刊BCN 2004年12月13日vol.1068掲載
市民満足度の向上に向け 見やすいサイト作成を追求
■閲覧数は月平均110万ページビュー秋田市のホームページは、アクセス数が2003年度で1100万ページビュー、今年度に入ってからは1か月平均110万ページビューで推移する。
特徴は、テキストによる内容を中心とし、1ページで表示するデータ量が50KB以内と軽いこと。北嶋英樹・秋田市企画調整部情報政策課情報化担当主席主査は、「市役所のサイトは若者から高齢者まで、秋田市民すべてが訪れることを想定しなければならない。しかも、アナログ回線で接続している市民も考慮する必要がある」と、データ量を極力軽くした理由を語る。
内容重視のホームページに仕上げたのは、「ビジュアルばかりに凝り、欲しい情報になかなかたどり着けないサイトは市民にストレスを与えてしまう」ため。見た目の美しさを二の次に置き、情報を迅速に提供できるようにした。
ホームページには、写真やイメージイラストがほとんど使われていない。「不必要な画像は排除し、内容を重視」(北嶋主査)と徹底している。ただし、「窓口となるトップページだけは画像を入れたほうが良い」と他の職員からの指摘もあり、市民のためのサイトという点からも、市民からデザインやネーミングを公募して採用した税キャラクター「ゼイキッズ」の画像を掲載した。
更新は、トピックスなど通常のコーナーが1日2回、秋田市が重要だと判断して配信するコーナー「秋田市からのお知らせ」については、新しい情報が入り次第随時アップしている。過去の情報は、3日以内のものなら「3日以内更新分」コーナーですべての内容を閲覧でき、それ以上であればキーワード検索で見つけることが可能だ。
北嶋主査は、「市民が市のことを考え、自らが主体だと意識してもらうためには、広範囲な情報を提供していくことが必須」と、行政情報が職員のものではなく、あくまで市民のものであることの重要性を説明する。
市ではユーザビリティ向上のために、日常の生活でインターネットにほとんど触れていないパソコン初心者に情報を検索してもらうテストを定期的に繰り返している。「職員の身内や庁舎近くの主婦などに来庁してもらい、自分が知りたい情報をホームページで探してもらう。こうして試してみると、プルダウンメニューをほとんど使わないなど、どうすれば初心者にも手軽にホームページを活用してもらえるかが分かる」というわけだ。
■サイトは情報流通の1手法
秋田市では、インターネットを地域密着型の情報配信専門サイトとして位置付けている。北嶋主査は、「ホームページは、広報紙やテレビ広報などと同列に扱い、積極的に内容の充実したものに仕上げなければ誰も見てくれない」と訴える。加えて、「広報紙や庁内の掲示板などに比べ、速報性が高いことを最大限に生かす」必要性を挙げる。
迅速性を生かすという点では、災害が発生した場合、ホームページが災害用のサイトに切り替わる仕組みにしている。災害用のページでは、発生時から10分ごとに情報を更新。避難勧告や防災対策なども配信している。急病で緊急を要する市民のためには、夜間や休日でも診療を受け付けている病院や、救急告示病院などの連絡先を掲載。災害と急病に関しては、iモードなど携帯電話からも閲覧できるようになっている。
また、インターネットの双方向性を生かし、市民とのコミュニケーションツールとして積極活用していくことも視野に入れる。メールやブラウザ入力を通じてこれまで寄せられた市民の市制に対する意見・要望を取りまとめ、来年早々にFAQや公的Q&Aコーナーとして新設するほか、職員と市民がチャット形式で会話できる電子会議室を将来的に設けることを検討していく。
ただし、秋田市のホームページに対する考え方は、「インターネットを活用して情報を配信すれば、それだけで市民が満足すると思い込むのは間違い」(北嶋主査)というのが基本スタンス。「インターネットは情報流通の1手法であり、すべてを解決できるものではない」(同)とし、あくまでもホームページは電子自治体への第1歩と捉える。
しかも、電子自治体に向けたシステム構築については、「お金をかけず知恵を出し、いかに市民が満足するサービスを提供できるか」(同)だという。ホームページの運用費は、ホームページ用サーバー2台のリース料金が年間で約140万円、秋田ケーブルテレビ10Mbps固定の回線構築費が初期投資で126万円、ホームページ更新費が年間で80万円などと低コストに抑え、「市民満足度の向上を追求している」(同)と自負する。
電子申請システムに関して北嶋主査は、「できるだけ簡単に安く構築する」ため、秋田市が取り組む共同利用に参加する予定だ。しかも、「各市が独自の申請を作り込めるようにテンプレート化することを提案している」という。
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