視点
2010年光3000万回線成功の条件
2004/11/29 16:41
週刊BCN 2004年11月29日vol.1066掲載
「光化計画が成功するビジネスモデルはない。こんなに急いで光化する国は日本だけ。わが社は当分はDSLでいく。いずれは光にするが、それにはいくつか条件がある」
光成功の条件とは何か、との質問に千本氏は口を濁したが、現在160万の光加入者をあと5年で3000万まで増やせるのか私も疑問をもっている。
NTTは巨額な利益をあげているように見えるが内実は人員整理など合理化で出した利益に支えられているのが実情で、ビジネスでは苦戦を続けている。今年暮れからは、日本テレコム、KDDIが始める市内電話直収事業で新たな挑戦を受ける。対抗上基本料の値下げを余儀なくされ、施設設置負担金(加入権料)も半額に値下げせざるを得なくなった。防衛的値下げだから、値下げしても収入が増えるわけではなく、経営にはプラスにならない。
今後成長できる分野でNTTに残されたのは光ファイバーの超高速通信サービスしかない。レゾナントコミュニケーションなどばら色の未来像を描くのも、NTTにのみ義務付けられた光開放義務をはずしてほしいと要求するのも、このためである。
3000万回線といえば現在の電話回線数の半分に当たる。かつて「すぐつく電話、すぐつながる電話」をキャッチフレーズに電話は成長を続けたが、光にあの時代のような熱気があるだろうか。
インターネットアクセスにしてもDSLがあれば十分だし、光でなければならない魅力ある通信サービスがまだない。実はわが家もDSLから乗り換え光にしたのだが、光からDSLに戻ろうかとさえ感じている。DSLのアクセス速度は50メガビットに高速化された。共同利用方式の光のアクセス速度はDSLに比べそれほど速くはない。値段も高い。
高速回線を必要とするテレビ映像配信は、一部で始まったが、著作権法の壁があって魅力的なコンテンツが少ない。
そもそもNTT自身に光化へのインセンティブがあるのかどうか。光しか生き残る道がないのは事実だが、従来の電話網を維持しつつ新しいネットワークを建設しなければならないのだから股さき状態になる。IP電話に押され電話事業が赤字に転落するのは時間の問題である。電話が赤字になったら光化計画は夢のまた夢である。
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