未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業 

<未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業>5.高速屋

2004/11/29 20:43

週刊BCN 2004年11月29日vol.1066掲載

データベースで大手に挑戦

 高速屋(新庄敏男代表取締役)は、「競合他社の処理速度に比べ100倍速い」(木下政利・取締役高速維新事業担当)というデータベース処理技術を開発し、データベースソフトを提供するソフト開発企業だ。

 富士ソフトABC(野澤宏会長兼社長)の資本参加を受け、2002年5月に創業した。IBMやマイクロソフト、オラクルといった大手が独占するデータベースソフト市場に挑戦するソフト開発ベンチャーである。

 市場を独占するデータベースソフトの処理速度の“遅さ”が創業のきっかけとなった。データ処理で一般的な技術である「HASH」などは使わず、全く新しい技術を開発・採用したことで高速化を実現。処理速度を部分的に2-3倍にし、その技術を掛け合わせることで、大幅にデータ処理を高速化する。

 木下取締役は、「企業の情報システムで作成される情報資産は年々増え続け、膨大な量になっているにも関わらず、そのデータを見つけ出す検索技術は一向に速くなっていない」と問題点を指摘。「大手企業が牛耳る市場でも、新技術で切り拓く自信があった」と話す。価格でのメリットもアピールするため、大手製品ほどインテグレーションが必要ない設計にし、「競合他社の製品に比べ半額で提供できるようにしている」(木下取締役)。

 だが、普及させるための壁は、大手企業の寡占市場というだけではなかった。データベースは信頼性が最も重要な製品ジャンル。実績や認知度がない高速屋のソリューションに、「魅力を感じてもらえても、実績のある大手製品をそのまま使うケースが多い」と、苦戦を強いられている。富士ソフトABCなど3社のITベンダーを通した間接販売も行っているが、直販をメインとしているだけに、販路も限られいる。

 高速屋では、来年度(05年12月期)からITベンダーとの協業体制確立を本格化させる。現状3社のパートナーを、来年度末までに10社まで増やす。「当社単独よりも、他社製品と組み合わせた共同ソリューションに仕上げることで、ユーザーに入り込んでいく」(木下取締役)と営業先の中心をエンドユーザーからITベンダーに転換した。高速な情報処理能力が必要なログ収集・解析ソフトやPOSシステムベンダーを中心に協業体制確立を急いでいる。すでに数社と交渉を進めている状況で、順調にアライアンス体制確立は進んでいるが、今後、パートナーへの支援体制をどう整えるかが課題になるだろう。(木村剛士)
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