コンテンツビジネス新潮流
<コンテンツビジネス新潮流>4.コンテンツビジネス振興に向けた教育を(1)
2004/11/22 16:18
週刊BCN 2004年11月22日vol.1065掲載
例えば「名探偵コナン」は、アジア各国で90%以上の認知度があり、好意度は最も低い香港で60%。「となりのトトロ」は、台湾、香港、韓国で90%の認知度があり、「ポケットモンスター」は、台湾、韓国、インドネシアなどで認知度はほぼ100%である。
日本にとって好ましい状況には違いないが、アジア各国において、これら日本のコンテンツの海賊版が蔓延している現実も無視できない。そこで、各国での流通整備も含め、日本のコンテンツ産業をより発展させるために取りまとめられたのが先の提言である。
ここでは、国際プロデュース機能の強化や、メディアミックスの推進、現地流通への積極的な参入などと、国内コンテンツ産業の意志決定プロセスやビジネスルールの改革にまで踏み込んだ提言がなされている。
この提言では触れられていないが、国内のコンテンツ産業を支える人材養成は重要である。5月に成立したコンテンツ促進法でも、基本的施策の最初の条文として人材の育成が挙げられている。
この法律においてコンテンツとは、映画、音楽、演劇、文芸、写真、漫画、アニメーション、コンピュータゲームなどと定義されているが、これらを制作するクリエイター教育は、現状では進んでいるとは言い難い。
例えば、経産省の資料によると、米国の大学で映画やテレビ番組制作に関わる教育を行っている学部(フィルムスクール)は全米で639校あるそうだ。さらに、2-3年で学位を取る大学院もある。
一方、日本で、映画制作に関わる教育を行っている学科を持つ大学は、おそらく数十程度。ゲームやウェブコンテンツのクリエイターを養成する専門学校は多いが、その他IT関連の専門学校を合わせても、米国のフィルムスクールの半数程度だと推測される。
日本と米国との比較においては、もちろん、市場規模の差は勘案しなくてはならない。しかし、冒頭で示した数値は、コンテンツの輸出の結果である。ゲームソフトの輸出額は最近減少しているが、それでも2000億円ある。コンテンツビジネスを産業としてより発展させる方向にあるなら、クリエイターやプロデューサーの養成が急務であろう。
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