e-Japanのあした 2005

<e-Japanのあした 2005>11.牛肉のトレーサビリティ(上)

2004/11/15 16:18

週刊BCN 2004年11月15日vol.1064掲載

 米国産牛肉の輸入再開に向けた動きが活発化するなかで、12月1日から「牛肉トレーサビリティ法」が食肉小売店などの流通段階で施行される。すでに昨年12月から酪農家や肉用牛農家などの管理者約13万事業者と、と畜者約170事業者を対象に段階施行されていたが、今回は食肉卸売業者約1万業者、食肉小売店約4万業者、焼肉、しゃぶしゃぶ、すき焼き、ステーキを提供する特定料理提供業者1-2万業者が対象。国産牛1頭ごとに付けられた個体識別番号を、小売店に並んだ精肉のパッケージや焼肉店のメニューなどに表示することが義務付けられ、消費者への情報提供が本格的にスタートする。(ジャーナリスト 千葉利宏)

 2001年9月に日本で最初のBSE(牛海綿状脳症)が報告されたあと、農林水産省では消費者に牛の生産履歴情報を提供する制度づくりに取り組んできた。02年7月に「牛海綿状脳症対策特別措置法」が施行されたあと、03年6月に「牛肉トレーサビリティ法(正式名称・牛の個体識別のための情報の管理および伝達に関する特別措置法)」を公布。国内で出生または輸入した牛は全て農林水産大臣(独立行政法人家畜改良センターに委託)に出生(輸入)年月日、雌雄の別、牛の種別、母牛の個体識別番号(輸入先の国名)の届出を義務付け、個体識別番号が印字された耳標を装着して管理することになった。


 昨年12月からは、まず出生・輸入、譲渡し・譲受けなどの異動、とさつまでの各段階で届出が義務化され、それ以前から生存している既存牛を含めた牛のデータベース(牛個体識別台帳)の構築が進められてきた。日本で飼育されている牛は約450万頭。「法施行時点の04年12月1日現在の既存牛について全国約13万戸の管理者から届出られた牛を全国約180か所の農政事務所を通じて確認し、今年5月までに登録を完了した」(池田正樹・消費・安全局衛生管理課牛トレーサビリティ監視班監視第2係長)。新たに出生や異動の届出データを確認(エラーチェック)して担当の農政事務所にデータを転送するシステムも開発。そのデータなどに基づいて農政事務所が立入検査を行い牛個体識別台帳のデータの精度向上も図っている。

 来月からは、いよいよ流通段階でのトレーサビリティ制度がスタートする。12月以降にとさつされる国産牛の枝肉や部分肉などには個体識別番号を表示。これを仕入れた食肉小売店や特定料理提供事業者は、個体識別番号を含む仕入れの記録を帳簿に記入して1年ごとにまとめ、2年間保存し、販売時には個体識別番号などを表示する必要がある。さらに牛肉と牛の個体識別番号との整合性を確保するためにDNA鑑定を実施する仕組みも新たに導入する。

 農水省では、食肉小売店や特定料理提供業者向けに対応マニュアルを作成、全国でセミナーを開催してトレーサビリティ制度導入の準備を進めてきた。消費者が生産履歴情報を確認する情報サイトも、パソコン用に加えて、9月からは携帯電話用を立ち上げ、小売店の店頭で携帯に個体識別番号を打ち込み生産履歴情報を確認した上で商品を購入できるといった利用も可能にした。さらにトレーサビリティ制度で扱う生産履歴情報に加えて、牛のエサに関する給餌情報、動物用医薬品の投与情報などを提供する「生産情報公表JAS規格」も昨年12月に導入。こうした農水省の働きかけに対して、食肉流通業界はトレーサビリティ制度への対応をどのように進めているのか。次回、その状況を紹介する。
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