e-Japanのあした 2005
<e-Japanのあした 2005>10.情報家電ブログ(下)
2004/11/08 16:18
週刊BCN 2004年11月08日vol.1063掲載
経産省では、情報家電の発展が3段階で進むことを想定している。第1段階は、デジタルカメラやDVDなど家電が「デジタル化」する段階で、現在はその過程にある。第2段階で、デジタル化された家電が相互に接続されて「ネットワーク化」し、第3段階ではその上で生活に役立つさまざまなサービスが展開される「プラットフォーム化」が進む──とのシナリオだ。
しかし、デジタル化からネットワーク化へと進化する道筋が現時点ではなかなか見えてこない。このままでは急成長を続けるアジア諸国の追い上げや、米国が支配するパソコンの普及によって、情報家電における日本の優位性が失われかねない可能性もある。
過去を振り返ると、日本の大手電機・電子メーカーは横並び体質が強く、個別製品を消費者ニーズに合致させる部分最適の技術戦略は得意でも、ネットワーク化によって全体最適をどう実現していくかといった戦略を苦手としてきた。情報家電でも、従来のように日本メーカーが自分の得意技術で市場を囲い込もうとする「ブラックボックス戦略」を続けていけば、かつてのDOS/Vパソコンの二の舞になりかねない。今後とも日本の情報家電産業が競争力を強めていくには、第2段階へ移行する必要があり、従来の“待ちの戦略”に見切りをつけるタイミングは今年か来年にもう迫っているのではないか、と指摘する。
問題は第2段階のネットワーク化への移行をどのように実現していくか。そのための戦術を、消費者が求める「ライフソリューションサービス」の視点から構築していこう──というのが経産省の提案だ。総務省が「u-Japan戦略」策定で行っている演繹的アプローチと共通する考え方と言えるが、具体的な方策として「コンシューマレポート」と「情報家電参照モデル」の導入を提案しているのがポイントである。
参照モデルは、電子政府・電子自治体の情報システム開発分野で昨年から日本にも導入された「エンタープライズアーキテクチャ(EA)」でも使われているビジネスソリューション手法。(1)実際に提供されるサービス・機能(BA)、(2)そこで行われるデータ処理(DA)、(3)サービス・機能とデータ処理をどのような固まりに区切って処理するか(AA)、(4)部品化されたサービスを実現するために必要となる技術構成(TA)──の4階層に整理したフレームワークに基づくことで、情報家電における相互運用性の確保を図ろうというものだ。
少子高齢化社会において情報家電が生活に役立つプラットフォームの役割を果たすようにするには、それぞれの情報家電製品がネットワークにつながって誰もが簡単にサービスを利用できるようでなければ意味がない。それを実現するのに、経産省が提案するような参照モデルで市場全体の可視化を図っていくのか、米マイクロソフトのウィンドウズのように特定企業に市場全体のアーキテクチャを管理してもらうのか。最後はやはり、どちらのアプローチが消費者の支持を得られる戦略かを打ち出せるかにかかっている。
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