視点
ネット企業が経済界世代交代をもたらす
2004/11/01 16:41
週刊BCN 2004年11月01日vol.1062掲載
4か月の時を経て、球団数を減らさずにというボトムラインがおおむね守られて、ライブドア・堀江氏と楽天・三木谷氏に対するヒヤリングが行われるに至った。さらに、そこに飛び込んできたのがソフトバンクの孫氏による福岡ダイエーホークス買収に向けての記者会見というニュースであった。
「プロ野球界に一陣の爽風が吹いた」というのが堀江氏が登場時の印象であったが、3氏が出揃ったところで、これは「わが国経済界全般の歴史変動の兆しだ」という認識に変わった。当初「たかが選手が…」とか「分をわきまえろ」という発言が世間を驚かせたが、思えばそれは舞台が展開するきっかけだった。「そんな会社の名前は、聞いたこともない」というのもあった。私は講義を持っている大学で、学生に問うてみたが、知っているという返事の方が多かった。
この一例でもわかるように、オーナー会議なるものの様子がマスコミで紹介される頻度が増えて明らかになったのは、「社会常識」との乖離であった。
「新興企業が赤字に耐えられるのか」という旧体制側の問いかけは、老舗名門企業が手放すという現実からすれば、とても発せられるべき質問ではない。しかも、ネット企業側は、赤字を継続して耐えるというのではなく、収益体質を変えるといっているのである。そのための工夫もいろいろ準備されているようだ。
既存の組織が当初狙っていたのは、合併によって1球団を減らし、ついでさらにもう1組の合併によって10球団とし、「1リーグやむなし」という筋書きであった。湧き上がったファンの力は署名運動・ストライキを経て、今日の成果をもたらした。そして、何より大きな収穫は、救世主として名乗り出た30代・40代の世代である。時代は動き出した。華やかな外見を持ちながら、旧態依然たる背後の勢力に、実力で鋭く切り込んでいった。
プロ野球の改革が、それ自体の縮小・衰退を防いで、むしろさらなる発展へのステップとなった(四国リーグなど基盤拡大の動き)だけにとどまらず、経済界全体の世代交代を具体的に促す嚆矢たることの意義は大きい。
- 1