未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業
<未来を紡ぐ 挑戦するソフト開発企業>1.プロローグ
2004/11/01 16:18
週刊BCN 2004年11月01日vol.1062掲載
その一方で、中長期的な戦略として、受託ソフト開発事業の縮小を考えているITベンダーは多い。
顧客や発注先からの低価格化要求は年を追うごとに厳しくなり、他社との競争はさらに激化。中国やインドのオフショア開発企業の台頭も、価格競争を助長させる原因となり、ソフト開発の利益率低下が顕在化してきている。
ある中堅システムインテグレータの幹部は、「顧客の要望に合ったソフトを個別に開発するだけで儲かる時代は終わった。強みとなる武器を持って他社との差別化を図らなければ生き残れない」という。これが業界の共通認識となっているほど、受託ソフト開発事業の現状は厳しい。
ソフトおよびサービス分野の市場調査を今年から始めた電子情報技術産業協会(JEITA)の伊藤大挙・ソリューションサービス事業委員会委員長(富士通・常務理事コンサルティング事業本部長)は、「システムとソフトの開発から、サービスへのシフトがさらに加速する」と断言する。
大手ITベンダーは、利益率が高く、大規模なカスタマイズを受けつけない自社パッケージの開発・販売や、アウトソーシングなどのサービスを強化することで、ビジネス拡大を図ろうとしている。受託ソフト開発事業の割合を徐々に下げ、ソリューションやサービスといった分野にリソースを集中させる方針を推進する。
では、中堅・中小のソフト開発企業はどうだろうか。
多額の資金を投入してソリューションやパッケージを開発できる体力はない。たとえパッケージやソリューションができても、大手ITベンダーの下請け、孫請け構造のなかで事業展開してきた企業に営業体制があるはずがない。ソフト開発企業は、現状をどう捉え、今後の経営戦略をどのように立てていくのか。
本連載では、受託ソフトという表には出にくい商品を扱っていることで、実態が見えにくかったソフト開発企業に焦点を当て、そのビジネス戦略をつまびらかにしていく。生存競争に勝ち残るためのコスト削減、新技術対応、そのための人材教育、不採算プロジェクト撲滅のための苦労、そして大手企業との協業と軋轢──。そのすべてをこの連載を通じてえぐり出し、ソフト開発産業の未来を占う。(木村剛士)
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