e-Japanのあした 2005

<e-Japanのあした 2005>9.情報家電ブログ(上)

2004/11/01 16:18

週刊BCN 2004年11月01日vol.1062掲載

 経済産業省は、政策議論用ペーパー「情報家電産業の収益力強化に向けた道筋」を10月1日に公表し、インターネットを通じて政策立案に役立つ情報やアイデアの提供を求める「e-Life Blog(イーライフブログ)」(http://www.rieti.go.jp/it/elife/)をスタートした。今年5月に取りまとめた「新産業創造戦略」で取り上げた戦略7分野の1つ、情報家電市場の活性化を図るための政策づくりが進められており、ブログに寄せられた意見などを参考にしながら、年内をめどにアクションプランをまとめる予定だ。有識者による審議会などで行われてきた政策立案作業にITを利活用するのは初めての試みだ。果たして情報家電市場の新たな変革に向けた突破口は開かれるのか。(ジャーナリスト 千葉利宏)

 “ITライフスタイル革命”を掲げて経産省が情報家電の市場化基本戦略「e-Lifeイニシアティブ」をまとめたのは2003年4月。家電製品にコンピュータが内蔵され、ネットワークで結ばれることで、生活様式に大きな変革をもたらすようなサービスが実現し、情報家電市場が大きく成長する、とのシナリオが描かれた。その後、情報家電市場は、薄型平面テレビ、DVD、デジタルカメラが「新・3種の神器」と称されるほど需要が拡大、日本経済全体の回復をリードするほどの状況を生んだ。

 しかし、薄型平面テレビ、DVD、デジカメともに、従来のブラウン管テレビ、ビデオデッキ、フィルムを使ったカメラの機能を単にデジタル化しただけで、それらがネットワークで結ばれて新しいサービスが実現したという事例はまだあまり聞こえてこない。従来の家電製品の域を出ていないために、家電量販店などの販売ルートでの安売り合戦に巻き込まれ、最先端技術を駆使しながら収益率が低い商品に甘んじている状況だ。もちろん、家電製品のデジタル化が進んだことでネットワーク化に向けた環境は整いつつあるわけだが、デジタル化された情報家電をどのようにネットワーク化するのか、ネットワーク化によって、どのような新しいサービスを生み出していくのか、「その道筋がなかなか見えてこない」(村上敬亮・経産省商務情報政策局情報政策課課長補佐)というのが、政策議論用ペーパーを公表した背景にある。

 今回のペーパーのなかで、かつてパソコンの世界でDOS/Vパソコンの普及を機に独自仕様のOSから仕様の標準化とオープンアーキテクチャ戦略の採用が進んだことに言及し、「情報家電の分野で今すぐパソコンのDOS/V化と同じ現象がやってくるとは考えにくい」との記述が出てくる。

 話は脱線するが、筆者自身、日本工業新聞(現・フジサンケイビジネスアイ)記者時代、90年9月に「日本電気98帝国が崩壊する日―パソコン市場での独走はいつまで続くか」を執筆した。DOS/Vの登場に触発され、当時、圧倒的なシェアを誇っていたNECの98パソコンがいずれシェアを大きく落とし、オープンアーキテクチャ路線へと転換を余儀なくされると大胆に予想した内容で、かなり物議を呼んだ。

 当時の関係者はほぼリタイアされ、時効成立ということで証言すると、この記事の最後に実は「Xデー予想クイズ」という企画を加えていた。NECが98から転換するXデーを読者に予想してもらい、その結果も後日、記事で知らせるとしたが、諸般の事情で記事化は断念せざるを得なかった。Xデー予想の結果は90年代後半が多かったと記憶しているが、予想以上のスピードでDOS/Vの普及が進んだのはご存知の通り。情報家電の将来シナリオをブログで議論することも大いに有益ではないだろうか。
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