IT Stock Frontline

IPOに選別色強まる 上場後、株価失速のケースも

2004/11/01 16:04

週刊BCN 2004年11月01日vol.1062掲載

エイチ・エス証券は急落

 好人気が続いていたIPO(株式新規公開)だが、上場後に株価が失速してしまうケースが出るなど変調が起きている。初値が公募価格を上回るか、もしくは同値の「負けなし」が昨年9月以降、1年間続いていたが、その記録も152社目(9月29日上場の三星食品)で途切れた。

 そして上場後に株価が急落したのがエイチ・エス証券(大証ヘラクレスに10月13日上場)。公募価格1500円を下回る1490円で初値をつけた後、22日には1070円まで急落した。同社はHISの澤田秀雄社長が1999年に買収、インターネット取引を拡大するとともにIPOの主幹事証券として実績を積んできた。公募価格1500円という水準が高すぎたうえ、21日には同社が主幹事を務めたアソシエント(大分県のソフト開発会社で東証マザーズ上場)の粉飾決算が判明。上場審査能力を疑問視する形で売りが殺到することになった。

 もちろん人気を集める銘柄もある。10月13日に東証マザーズに上場したチップ・ワン・ストップ。公募価格60万円の2倍の120万円で初値を付けた後、21日には198万円まで上昇した。同社は、国内最大の半導体・電子部品購買ウェブサイトを運営。顧客は在庫をもたずに、あらゆる部品を少量から、安価、迅速に一括購入できる。いわば“電子部品業界のアスクル”。半導体・電子部品の国内消費市場は5兆-6兆円。このうち、同社の標的とする小口マーケットは4000億-5000億円規模。今12月期の売上高見通しが20億円弱の同社にとって成長余力はまだ大きい。

 市場から3000億円以上を吸い上げた電源開発の上場(10月6日)以来、IPOマーケットは苦戦気味。11月もNTT都市開発、エルピーダメモリ(NECと日立製作所が出資するDRAM専業大手)、国際石油開発という大型の新規上場が相次ぐことから、選別色が強い展開が続きそうだ。(有賀勝久)
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