視点

名前の書けるパソコンを

2004/10/25 16:41

週刊BCN 2004年10月25日vol.1061掲載

 去る9月27日、法務省は人名用漢字に「苺」や「舵」など、488字を追加するよう、戸籍法施行規則をあらためた。この際、これまでは「当分の間」と、条件付きで使用を認めてきた旧漢字205字も、正式なものに格上げされた。人名用漢字は、983字となり、名前に使える漢字は、常用漢字の1945字とあわせて、2928字に広がった。人名用漢字の拡大は、単に名付けのみに関わる問題ではない。公用文や出版などで、通常用いる漢字の範囲や字体にも関連する。電子図書館における、漢字の使い方にも影響を及ぼす。筆者が関わる、著作権切れ作品の電子化プロジェクトでも、改訂を受けて漢字の扱いをどう見直すか、検討を始めた。まず、新しい人名用漢字表をテキスト化してみると、現在のパソコンの標準文字環境といってよい、第1第2水準の漢字を決めたJIS X 0208にないものが105字あった。

 実はこれまでも、「当分の間」人名への使用を許すとされてきた漢字の中には、第1第2水準にないものがあった。日本人の名前を、すべて取り扱えないという問題は、ここで新たに生じたものではない。ただし、今回の改訂で、これまで取り扱えなかったものはすべて、正式な人名用漢字となった。新たに追加されたものの中にも、0208にない文字が含まれている。となれば、公的に使用を認められた漢字に、パソコンで書き表せないものが数多く含まれるという状態は、これ以上放置するべきではないだろう。パソコンの使用環境を整備し、育てる立場にあるIT業界の皆さんには、今回の人名用漢字改訂が突きつけた問題への解決策を提示してほしい。新しいビジネスチャンスともなりうる。サポートとして取り組んでもらえれば、社会的責任を果たす企業として、評価が高まるだろう。

 人名用漢字のすべては、第3第4水準を決めたJIS X 0213の範囲に収まっている。ウィンドウズ98、Me、マッキントッシュOS 9以前用には、0213の2004年改訂に対応したシフトJIS対応のフォントが提供されれば、問題は解決される。次期ウィンドウズには、0213のサポート。2000からXPまでは、アプリケーション側でのシフトJIS-ユニコード変換による0213対応。マックOS Xにも、0213の2004年改訂への早期追随をお願いしたい。
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