大遊泳時代

<大遊泳時代>第41回 e-内職とパーソナルオフィス・モバイルオフィスPOMO

2004/10/25 16:18

週刊BCN 2004年10月25日vol.1061掲載

松下電器産業 役員 前川洋一郎

 昔、内職というと、浪人武士の番傘張り程ではないが、少し暗いイメージがした。広辞苑によると「本業の他に家計の補助のためにする仕事」、「主婦などが家事の暇にする賃仕事」となっている。この内職も戦後はパート職の誕生と奥様が外様化することで死語になったようだ。会社では内職というとセールスの合間にプライベートなバイトをこなす者、会社の電話を使って株取引をしていて落ち着かない者を見かけたが、世の中見逃さないもので、大体は本人がドツボに嵌って一件落着が多かった。小さな例では、会議中に他の書類を持ってきて、要領良く片付けるのも内職と言ったが、どうでも良い会議ならかえって生産性向上になるかもしれない。

 最近驚いたことに、ある重要な会議でふと前を見ると、机の下でケータイメールをごそごそとやっている人、隣には、パソコンで真面目に速記をとっている人が、と思ったら大違い。画面の中はヤフー!だった。外勤の電車の中でもパソコンで株の取引に熱心な人、歩きながら熱心に商談かと思ったら、転職探しの人もいる。これではまさにe-内職である。困ったものだ。情報セキュリティやコンプライアンスといっても勤務内容や態度までコントロールできない。パーソナルITが進むとどこまで性善説でいくか難しい。

 以前、アメリカからSOHOの概念が入ってきたが、日本では勤務形態として定着しなかった。しかし、これからはパーソナルオフィス・モバイルオフィスがどんどん進行する。いわばPOMOである。POMOにおけるe-内職をどうみるか、公私・正悪の区別判断ができる思考習慣と行動様式を身につける教育の機会は一生涯不可欠である。ねえワトソン君!「人間は誘惑に弱い動物だからね!」。「そうですね。その人間の集まった企業はさらに惰性に弱い動物ですからね」。
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