e-Japanのあした 2005
<e-Japanのあした 2005>8.u-Japan構想
2004/10/25 16:18
週刊BCN 2004年10月25日vol.1061掲載
「いつでも、どこでも、何でも、誰でも」ネットワークに簡単につながるユビキタスネット社会とはどのようなものか。言葉だけでは具体的なイメージが沸きにくいかもしれない。まだ誰も経験したことのない社会をこれから作り上げていこうとしているわけで、具体的なイメージが沸かないのも当然である。「2010年ごろ、日本社会の大きな課題はやはり少子高齢化だろう。普通の人が高齢者となる。そうした社会での生活シーンを考えていくことが必要だ」(吉崎正弘・情報通信政策局総合政策課長)。少子高齢化など社会の変化に伴って浮上してくるであろうさまざまな課題をICTによって克服していこうというのが、ユビキタスネット社会の基本的な理念と言える。
01年からスタートした政府のe-Japan戦略では、IT化に日本が出遅れたとの危機感から「05年に世界最先端のIT国家をめざす」という目標が掲げられた。先進的なIT国家が他に存在しており、めざすべき目標も身近にあった。しかし、世界最先端を達成してしまえば、見習うべきものはなくなってしまい、06年以降は自ら切り拓いていかなければならなくなる。
「役所の施策は、これまで対処療法的、事後処理的なものが多かった。しかし、それではユビキタスネット社会を実現することは難しい。まず、5年後のあるべき姿を描き、そこから演繹的なアプローチで政策を展開していく必要がある」(吉崎課長)。総務省でも、ICT政策大綱(03年度まではIT政策大綱)を毎年策定するなかでICT社会の将来像を描いてきたが、5年先の中長期的なビジョンを描いた上で政策を工程表にまとめるのは初めての試みだ。「社会が大きく変化しない状況が続くのなら前例踏襲主義で良いかもしれないが、それではもう通用しない」。政策の立案・策定のやり方も、ユビキタスネット社会に対応したものへと変化しつつある。
ユビキタスネット社会の将来像をどう描くのか。年末に向けて政策懇談会で検討が進められているが、ポイントは“利用者視点”だ。これまでの政策は供給者を通じて全体をコントロールする考え方が強かったが、これからは利用者の視点も取り入れてバランスを取っていく必要が出てきている。政策懇談会での議論でも「安心・安全が重要なキーワードとなっている」と、利用者に重点を置いた将来像が描かれつつあるようだ。これまでの中央省庁の政策にも“5箇年計画”といった中期的な計画が作成されたものはあったが、社会環境が変化して実情に合わなくなっても変更されずに継続されることが少なくなかった。その代表例が道路整備などの公共事業だったわけだが、ユビキタスネット社会も、現在描いた将来像と2010年の姿とはかなり違ったものになる可能性もある。そうした変化にもフレキシブルに対応できる工程表をどうつくっていくかが求められそうだ。
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