China 2004→2008

<China 2004→2008>24(最終回).育つ優秀な中間層の人材

2004/10/25 16:18

週刊BCN 2004年10月25日vol.1061掲載

 この連載も今号で最終回になる。これまで、中国IT産業の発展ぶりには、見せかけの部分も相当にあると述べてきた。おそらく中国の経済発展は、原油価格の高騰などによるマイナス要因も吸収し、向こう数年は続くはずだ。少なくとも2008年の北京五輪までは揺るぎないだろう。この高度成長を糧にして、中国のIT産業が真の“実力”を高められるかどうか、これからが正念場である。浮かれていられない。それは中国政府もITベンダーの経営者も痛感しているはずだ。(坂口正憲(ジャーナリスト))

 カギを握るのは人材だろう。IT産業はコアの部分が知的集約産業であり、最終的には“知”の厚みがモノを言う世界である。その点、実学と実利が尊ばれる中国では、日本と比べるとIT産業に優秀な人材が集まりやすい社会的土壌がある。中国は著しく理系偏重の社会である。それは共産党指導部の8割が理系出身という事実からもうかがえる。優秀な学生ほど実学の理工学を選ぶ傾向がある。大学以上の理系卒業生の数は現在、年間50万人を超え、日本の4倍近い。絶対数も豊富だ。そして、理系学生の中でも比較的優秀な学生がコンピュータ学科を選んでおり、その比率は15%を超える。

 「技術者がピンキリなのは、日本も中国も同じ。しかし、ピンの部分は中国の方が質、量とも上」(中国の日系ソフト開発会社)と言われる。また、共産党の立党精神がいまだに生きる中国は、実利尊重、現場重視の社会である。現場(ビジネス)で成果を上げないと認められず、出世もできないので、理工系の学生もビジネス志向が強い(日本の場合、優秀な学生ほど研究者志向が強く、現場から離れがちだ)。

 ビジネス志向が強く、優秀な学生が大量に流入してくる中国IT産業は、人材面から言えば、大きな可能性を秘めているのである。そして見逃せないのが、こうした優秀な人材が産業界へ流入し始めたのは90年代半ばからということ。第1世代の人材は30歳を超え、産業の要となる“中間層”に育ってきている。中国IT産業が強みを持つのは、まさに、これからかもしれない。

 この連載に長くお付き合い頂き、有難うございました。(終わり)
  • 1