情報化新時代 変わる地域社会
<情報化新時代 変わる地域社会>第23回 東京都杉並区 「自治体コールセンター」で
2004/10/18 20:43
週刊BCN 2004年10月18日vol.1060掲載
NPOと共同で実証実験 06年の稼働開始を目指す
■外部委託のメリットはコスト削減杉並区が実施したコールセンター実証実験は、NPO(特定非営利活動)法人のデジタルコミュニティズ地域情報化推進センター(DCs地域情報化推進センター)と協力し、電話番号案内の104番を運営するNTT番号情報への業務委託という形で行った。札幌市などが独自にコールセンターを運営するのに対し、アウトソーシングという形を採用したことになる。
外部委託により、コールセンターに必要な要員の人件費や、設備の導入・保守といったコストが削減できるメリットがある。DCs地域情報化推進センターによれば、10万人規模の自治体のケースで、年間24万件の電話による問い合わせがあると想定して、それに関わる職員のコストは年間1億2000万円という。これをアウトソーシングすることで年間の業務コストは7200万円と、4800万円の削減が可能になる。
また、実際にコールセンターを運用している自治体の例では、初期投資としてコンサルティング費用3000万円、システム構築費2000万円、オペレーター費用年間6000万円、職員(3人)の人件費2550万円の合計1億3550万円を必要とした。しかし、同じ規模のコールセンターを運営するのに、DCs地域情報化推進センターのモデルでは初年度のトライアル料金500万円を含めて、1587万円からで済むという。
自治体側から見れば、費用削減のメリットはあっても、その自治体の仕組みに合ったコールセンター業務ができるか、という点が不安になる。今回の実証実験では、「特に不都合な点はなかった」(塩畑真司・杉並区政策経営部情報システム課開発担当係長)が、オペレーターの研修は必要になる。今回の実証実験では、NTT番号情報で杉並区の対応窓口として4席を準備、24時間で9人(スーパーバイザー含む)のオペレーターが担当した。
■ワンストップ回答でサービス向上
コストの点から見れば外部委託や共同運営によるコールセンターのメリットは大きいが、「杉並区仕様を持ち込めるかどうか」(塩畑係長)といった課題点もあるという。複数の自治体による共同運営の場合、コールセンターに電話をかけてきた相手が杉並区民なのか違う自治体なのかを判別しなければならない。オペレーターに住んでいる自治体名を告げなければならないとしたら、住民サービスという点でマイナスの印象を与えかねない。
通常のコールセンターの目的は、さまざまな行政への問い合わせに対しワンストップで答えられること。内容によっては各課をたらい回しにされた事案も、24時間365日対応可能なコールセンターへ問い合わせるだけで済むようになる。オペレーター用のFAQ作成は、職員と住民の間のナレッジマネジメントを効率化することにも役立つ。
実は杉並区ばかりでなく、多くの自治体でコールセンターを運営している〝実績〟がある。粗大ゴミの収集依頼などがそれだ。ある市の情報政策担当者は、「粗大ゴミ収集のように、窓口をはっきりさせればいいのではないか。本当にコールセンターの必要性があるのだろうか」と、その必要性に疑問を投げかける。
今回の実証実験では、期間中の電話件数が開庁時間帯224回、閉庁時間帯366回と、閉庁後の問い合わせの方が多かった。また、杉並区という都市部の環境から、午後10時から午後11時にコールのピークがあったり、午前零時以降にも問い合わせがあった。このことだけでも、コールセンター設置の意味はあるだろう。アンケート結果でも、有効回答の54.8%が「とても便利」と評価、「まあ便利」の35.6%と合わせて90.4%が便利さを認めている。
杉並区ではこの結果を含めて、コールセンター設置の検討を開始した。予算作成が進められている段階だが、「予定では05年度に開発・構築、06年度の稼動開始を予定している」(塩畑係長)という。
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