China 2004→2008

<China 2004→2008>23.見かけ上の発展で終わるのか

2004/10/18 16:18

週刊BCN 2004年10月18日vol.1060掲載

 中国IT産業の将来像を予測してきたこの連載も残り2回となり、まとめに入りたい。先ごろ、今年の中国のGDP(国内総生産)は実質成長率が9.4%程度となり、昨年の9.1%をやや上回る、との見通しが中国政府機関から発表された。中国政府が発表する経済統計は、どこまで信用してよいのかという疑念もあるが、昨年に比べても市民の金回りは確実に良くなっていると感じる。実質成長9.4%と言われると、「それもあり得ん」と納得する部分もある。だが、中国のIT産業が成長率に見合うほどの力を確実につけているのかと言えば、心もとないところがある。IT産業を離れ、流通産業を例にとって説明しよう。

 筆者が上海で住む家の近くに大型ショッピングセンターがある。平日でも夕方になると60機ほどあるレジに長蛇の列ができる。それは壮観である。また、商品政策や販促策も考え抜かれている。これだけを見れば、中国の流通産業は盛況で、発展していると映る。しかし、このショッピングセンター、実は仏企業が運営しており、台湾人を管理職に多く登用している。その仏企業は先に台湾での店舗展開に成功しており、その経験とノウハウをもとに中国本土でのローカリゼーションを行っているのである。賑わう売り場の裏で、現地の人がどれだけ関与し、技術やノウハウを蓄えているのか。このシッピングセンターを利用する度にそう思わざるを得ない。

 翻って日本の高度成長時代を考えると、今ほどのグローバリゼーションはなかったので、保護主義政策が容認され、流通産業に外資が入ってこなかった。その間、日本は日本なりの高い生産性を持つ流通産業を育て上げた。よく日本の流通産業は生産性が低いといわれるが、それは誤解である。ここ数年、世界1位、2位の小売業が相次ぎ日本市場に参入したが、ほとんど影響を及ぼしていない。もちろん流通産業とIT産業を単純に同列で比べることはできないが、激しいグローバリゼーションに組み込まれる中国の流通産業に感じるもろさを、IT産業にも感じずにいられない。では、このまま中国IT産業は見かけ上の発展に終わり、どこかで虚構が崩れてしまうのか。次の最終回に見方を述べてみたい。
  • 1