China 2004→2008

<China 2004→2008>22.MSを翻弄する中国政府

2004/10/11 16:18

週刊BCN 2004年10月11日vol.1059掲載

 中国ソフト産業が国際競争力を持つには、前号までで触れたオフショア開発、組み込みシステムと並び、国産ソフトが育つかどうかがポイントになる。2003年夏から中国政府は、すべての公的機関で国産ソフトを優先購入するように指導している。中国もWTO(世界貿易機関)に加盟している以上、一般消費者に対して特定商品を強制できないが、公的機関ならば問題ないと判断したのだろう(米国のソフト業界団体などは反発している)。特にマイクロソフトに独占されているクライアントソフト市場へ何とかクサビを打ちたいと考えている。(坂口正憲(ジャーナリスト))

 中国政府が打ち出した優先購入リストの筆頭には、パソコンOSとして中科紅旗軟件技術の「紅旗Linux」、オフィスソフトとして金山軟件の「WPS Office」などが掲げられる。一方で、マイクロソフトも中国に入れあげる。同社日本法人関係者が、「最近、米国から来る飛行機(幹部)は我々の頭上を飛び越え中国に直行する」と自ちょう気味に語るほどである。マイクロソフトは02年から05年の3年間、7億5000万ドルも中国に投資している。米国以外では英国にしかない中央研究所を北京に置き、研究成果の一部を中国政府にライセンス供与することまで約束する。だが、中国政府はしたたかである。巨大市場をちらつかせながら、マイクロソフトの投資を呼び込む一方で、自国産業への保護政策は貫いている。

 ともあれ、中国政府が後押しする紅旗Linux(デスクトップOS)は04年、出荷本数が100万ライセンスに達する言われる。もちろん、すべてが実使用されるとは思えないが、公的機関では徐々に紅旗Linuxが普及し始めている。さすがに国産ソフトだけでは、閉鎖的と海外から非難されると思ったのか、中国政府は米サン・マイクロシステムズとも契約し、04年だけで同社のデスクトップLinux製品を50万-100万ライセンスを購入する。その結果、「公的機関へのLinux採用の一義的な目的は情報セキュリティ強化」という“タテマエ”の主張を対外的に通せる。このバランス感覚は興味深い。中国のクライアントソフト市場で国産ソフトが育つかどうか。この数年が勝負になりそうだ。
  • 1