変革セキュリティビジネス

<変革セキュリティビジネス>38.クリアスウィフト

2004/10/04 20:43

週刊BCN 2004年10月04日vol.1058掲載

 どこの企業や個人でも1度は受け取ったことがあるだろうスパム(迷惑メール)。そのスパム対策ソフト専業メーカーが、クリアスウィフトだ。日本では、携帯電話へのスパムが一時社会問題となったが、パソコンへのスパムは、まだまだ欧米に比べると一般的ではないという。

スパム対策ソフトでビジネス拡大

 欧米の企業ユーザーは、1日に受信するメールのうち、約6割がスパムで、日本では「会社の代表メールアドレスなど、一部のメールアドレスのみが大量のスパムを受け取るケースが大半で、個人アドレスへの被害はほとんど出ていない」(宮本哲也・マーケティングディレクター)。クリアスウィフトのワールドワイドの売上高の中で日本法人が占める割合も、「約2-3%に過ぎない」(宮本マーケティングディレクター)。

 だが、最近の日本市場では、スパム対策製品の拡販に、他国市場にはない追い風が吹いているという。その理由は、個人情報漏えい事件と個人情報保護法。他国では、生産性向上のために導入するケースが多いスパム対策製品だが、日本市場に限ってはセキュリティ対策という観点から需要が広がっている。ウイルス対策ソフトだけでは防ぐことができないフィッシングやスパイウェアなど、メールを利用して送信される不正プログラムが急増。個人情報を勝手に奪う機能を持つスパムも登場しているだけに、対策を迫られている企業ユーザーが増えているわけだ。

 シマンテックなど、複数のセキュリティジャンルを包含する総合セキュリティメーカーが、この需要を囲い込もうと、今年に入ってからスパム対策製品を相次いで投入しており、競争が激化してきた。だが、宮本マーケティングディレクターは、「まだ黎明期であり、これからの分野なので、(競合他社が増えることは)むしろ相乗効果が出てビジネス拡大につながっている」と話す。実際、クリアスウィフトのこのところの売上高は、前年水準に比べ約40%増で推移している。

 9月下旬、クリアスウィフトは、「スパム検出率98%」(宮本マーケティングディレクター)を誇るスパム対策ソフト「メールスウィーパー」に、これまで別途提供していたクライアント管理ソフトを付加したスイート製品を初めて発表。メールスウィーパー単品価格のままで今月中旬から販売を開始する計画で、この特需を囲い込もうとまずは製品を揃えた。来年早々にはバージョンアップ版も投入する予定。販売パートナー施策は、シー・エス・イーやフォーバルクリエーティブなど5社で構成する1次代理店を大幅に増やすつもりはないが、これまで手がけていなかったOEM(相手先ブランドによる生産)提供や、他ジャンルのセキュリティメーカーとの共同開発製品を検討しており、新たなビジネスモデルで収益拡大も狙う。(木村剛士)
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