情報化新時代 変わる地域社会
<情報化新時代 変わる地域社会>第20回 新潟県長岡市(下) アウトソーシングの機運高まる
2004/09/27 20:43
週刊BCN 2004年09月27日vol.1057掲載
集中豪雨で浮き彫りになった情報システムの耐災害性
■NSCS、データセンターをオープン今回の集中豪雨で注目されることになったのが、情報システムのアウトソーシングだ。中之島町役場では、住民記録のサーバーといった重要なシステムは庁舎2階にあったため難を逃れたが、通信系の設備が被害を受けたことで、事実上機能を停止した。
水道や電気などとともに通信もライフラインの1つだが、役場の情報インフラがダウンしてしまえば、その後の復旧にも影響が出ないとは言えない。情報システムのTCO(システム総保有コスト)低減というだけでなく、万一の大災害に備えて情報システムをアウトソーシングしようという機運も高まりを見せている。
特に今回の豪雨では、三条市の金属加工業や見附市の織物工場など、重要な地場産業でもコンピュータが被害を受けたところがあり、耐震構造など十分なファシリティ機能を有するIDC(インターネットデータセンター)のニーズが出てきそうだ。
長岡市に本社を置く、NS・コンピュータサービス(NSCS、高野繁理社長)は9月1日付で、長岡市郊外の南部工業団地にIDC「NSCS情報センター」をオープンした。
NSCS情報センターは、最新の免震構造を採用し、地震をはじめとした災害に対して強固な構造を持ち、停電時でも自家発電に切り替わり1週間程度は無給油で稼動できるなど、県内でも有数のIDC機能を持つ。
NSCSがこうしたIDCを持つのは、「地元企業の情報システムのアウトソーシングニーズに応える」(岡本尚武・NSCS取締役第1システム部部長)という目的のほかに、長岡市がNECに発注して構築している新情報システムについて、アウトソーシングの受注を目指しているということもある。
長岡市は、これまでのレガシーシステムからクライアント/サーバー(C/S)型のオープンシステムに移行し、来年4月1日に稼動開始することにしている。「すでに移行作業は始まっており、庁内にサーバーを置いている」(金子淳一・長岡市企画部情報政策課長)が、現在の長岡市の情報システムの運用を受託しているNSCSとしては、やがてはアウトソーシングに移行させたい、と考えている。
■NEC、地元IT企業との関係強化
実はすでに長岡市の情報システムの一部は、NSCSの親会社である日本精機が所有するビルにある、NSCSの「東情報センター」にアウトソーシングされている。ハウジングサービスを受けているシステムは、総務省の地域イントラネット構築事業で作り上げたインターネット関連のサーバー。今回、新しい情報センターが完成、稼動開始したことで、この長岡市のシステムも新施設に移される。NSCSではこうした実績をもとに、長岡市の新システムのアウトソーシングを狙っているわけだ。
本田技研工業向けを中心に、メーターなど自動車部品生産を行っている日本精機の情報システム部門として設立されたNSCSは、これまで独立系システムインテグレータとして、大手コンピュータメーカーと、「等距離でお付き合いしてきた」(岡本取締役)という。その証拠に、今回のIDCのオープニングには、大手ベンダーの新潟支店長などが顔を並べたという。
ただ今回、NECが長岡市の新情報システム構築を受注したことで、長岡市の情報システムの運用を受託しているNSCSとの関係が一段と深まってきた。
NEC長岡支店の荒木哲哉支店長も、NSCSとの関係について「長岡市のシステムを受注したことで関係ができたが、これからも地元の有力システムインテグレータとして、他の分野でも協力できそうだ」としており、民間向けや自治体向けを含めて新たな協業に発展する可能性もある。
長岡市が新システムへの移行を開始し、NSCSは長岡市に堅牢な情報センターを開設した。同じ中越地方の柏崎市のように、情報システムのアウトソーシングに積極的な自治体も出てきてはいる。しかし、その他の自治体のIT化に対する動きに対しては、自治体関係者もベンダーも、首をかしげているのが実情だ。
長岡以南の中越地方は、世界的に見ても降雪量が多い一帯だ。そうした気候的条件の悪さは、住民サービス向上のための電子化やシステムの保守・メンテナンスを軽減するためのアウトソーシングに結びつきやすいようにも見える。しかし、過疎化に悩む雪深い山間部では、残念ながらIT化に対する関心は薄いとし、大手ベンダーなども需要の拡大には懐疑的になっている。
- 1