拓け、中堅・中小企業市場 事例に見るSMB戦略

<拓け、中堅・中小企業市場 事例に見るSMB戦略>第24回 物流サイト運営会社のトラボックス編(1)

2004/09/27 16:18

週刊BCN 2004年09月27日vol.1057掲載

 荷主とトラック運送会社を結ぶオンライン物流ネットワーク「Tr@Box.net(トラボックス・ドットネット)」。サービス開始から5年で、有料会員4450社(トラック運送会社3200社、荷主1150社)が登録する国内最大級の物流サイトだ。全国のトラック運送会社は、現在約5万8000社(全日本トラック協会調べ)。この2割弱を会員に持つサイトに成長したが、開設のきっかけは意外とシンプルだ。同サイトを運営するトラボックスの藤倉泰徳社長と田代正副社長は、いずれも東京都足立区で運送会社を経営する2代目社長。「不況で、荷物を運ぶ仕事を効率よく探せない。ならば、足立区の運送会社で結束して自ら情報収集に走ろう」(藤倉社長)と考えたという。

無料のサイトからスタート

 1999年11月のサービス開始当初は、簡単なホームページを開設して運送会社の無料会員を募り、荷主にサイトへ来てもらう仕組みだった。荷主がこのホームページのメーリングリストへ仕事を依頼すると、会員の携帯電話にメールで情報を発信した。この情報を得た運送会社は、「稼動していないトラックがあれば、荷主に連絡する」(藤倉社長)という簡単なシステム。当初は、サイト会社としての会社登記をせず、“手弁当”で運営していたという。

 ネットバブルの当時、トラボックス・ドットネットのようなサイトは数多く存在した。だが、そのほとんどが高額の有料会員制。不況に喘ぐ運送会社には手を出せない値段だった。トラボックス・ドットネットは無料という点で珍しいこともあり、運送関連の媒体がこぞって取り上げた。サイト開設から2か月後、大きな転機が訪れる。00年1月、これらの記事を見て、ベンチャー企業向けベンチャー・キャピタル(VC)制度を導入していた経営コンサルティング会社のボストンコンサルティングの担当者が、「VCを利用して欲しい」旨を依頼するため訪問する。

 しかし、「ボストンの担当者は、当社サイトの実用性に驚き、ボストンのVCでなく、担当者自らが出資した」(藤倉社長)。藤倉社長は早速、自分が経営する足立区の運送会社の子会社を、事業内容と会社名を変更して登記をし直し、晴れて00年3月、サイト運営会社が誕生する。サイトは、サービス開始当初のものを再構築。すべて、システム構築の経験を持つボストン担当者1人が自前で作った。後に、4450社の会員を抱えるサイトに成長する。そんななか、このサイトに強い関心を抱いたソフトウェアベンダーがあった。中堅・中小企業市場に大きな影響力のあるマイクロソフトである。「当社のシステムは、未だにマイクロソフト製品をほとんど使っていない」(藤倉社長)にも関わらずだ。(谷畑良胤)
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