China 2004→2008

<China 2004→2008>19.ソフト産業育成の重点3分野

2004/09/20 16:18

週刊BCN 2004年09月20日vol.1056掲載

 国が豊かになるには、モノやサービスを海外に売って外貨を稼ぎ、一方で富が国外へ流出するのを食い止める必要がある。前号で述べた通り、中国ソフト産業は市場として拡大しているが、そのベースとなっているのは欧米の技術や製品。しかも、今のところ、外貨を稼げない国内サービス業の域にとどまっている。ならば、遅れてきた中国ソフト産業は、どのようにして国際競争力をつけていくのか。(坂口正憲(ジャーナリスト))

 1つには、独自の技術・製品を持ち、少なくとも国内市場で欧米勢と戦える“民族資本”の育成だ。

 2つ目は、コスト競争力を生かした技術者の輸出やオフショア開発の受け入れ。いわば、インド型の産業振興である。そして3つ目は、あまり注目されていないが、中国は日本と同様に組み込みシステム(半導体とソフトが一体化したコンピュータシステム)に並々ならぬ熱意を持っている。中国のソフト産業はインドのそれと違い、後背地に伸び盛りの製造業があり、先端の組み込みシステムが求められている。東京大学生産技術研究所の橋本秀紀助教授は、「今後の製造業は、モノづくりとソフト開発が一体化するだろう。どちらでも強い技術力を持っていなければ、国際競争に勝てなくなる」と指摘する。

 つまり、大げさに言うと、組み込みシステム分野は中国経済の要である製造業の命運をも握っているのである。組み込みシステム分野に携わるある研究者は、「中国の企業や大学から技術提携を持ちかける話が次々とやってくる。だが、技術情報を漏れるのが恐くて、申し入れは断っている」と話す。日本のソフト産業も、まさにモノづくりと一体化した組み込みシステムで国際競争力をつけようとしている。

 例えば、ITS(高度道路交通システム)は日本の世界戦略商品であり、国内のソフト開発ベンチャーがITS上で動くアプリケーションの開発にしのぎを削っている。日中のソフト産業は今後、ある局面では丁々発止でぶつかる可能性も大いにある。話はかなり横道に逸れてしまったが、ともあれ中国政府は、3つの分野で自国のソフト産業を育成し、国際競争力をつけていく考えだ。そこには明確なビジョンと野望がうかがえる。
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