China 2004→2008

<China 2004→2008>17.国内ソフト産業との相似点

2004/09/06 16:18

週刊BCN 2004年09月06日vol.1054掲載

 今号から中国ソフト産業の実態と将来見通しを掘り下げいくわけだが、ひと口にソフト産業と言っても、漠としてつかみ所がない。だが、身近な国内ソフト産業と比べると、中国ソフト産業が抱える構造的な課題と競争優位性が見えやすくなるはずだ。(坂口正憲(ジャーナリスト))

 少し長くなるが、国内ソフト産業の実態を見てみよう。日本の情報産業の市場規模は14兆円(業界内での企業間取引を除くと実質8兆円程度)と言われるが、この中で国産ソフト製品はどれぐらいの割合を占めているだろうか。例えば、OSやデータベース、アプリケーションパッケージなどコンポーネント製品の大部分は欧米製。“日本語”ワープロでさえ大方は米国製品だ。

 もちろん14兆円の中には、ソフト開発など「サービス」分野の売上高が含まれ、そのほとんどを現状では国内企業が手掛けている。だが、そのサービスさえも海外企業に流れたり、コンポーネント化されたりする傾向が徐々に強まっている。市場規模が大きい割に国内ソフト産業の競争力は意外に低いのだ。飯塚悦功・東京大学教授は、「日本のソフト産業がコンポーネント製品やサービスで欧米勢に肩を並べるのは難しい。残された競争力の源泉は、デジタル製品や自動車と一体化した組み込みソフト分野」と指摘する。デジタル家電など様々な電子機器に搭載される組み込みソフトの市場は急拡大しており、現在のところ2兆円規模。この分野のソフト技術者は全体の約3割、15万人ほどと見られる。

 国内メーカーは、DVDレコーダーやデジタルテレビなどのデジタル家電、あるいは次世代型自動車に強みを持っており、それらの機器を支える組み込みソフトは世界的に見てトップクラスの機能と品質を有していると見られる。特に先進の組み込みソフトは、半導体などのハードや精密制御メカニズムとの「すり合わせ」から生まれてくる。そのノウハウの多くはコンポーネント化されず、ブラックボックスとなっている。この組み込みソフトこそが、国内ソフト産業が競争力を高めるカギになるというわけだ。実は中国ソフト産業にも日本と似た部分がある。次回から日本と比較しながら、構造的な課題と競争優位性を分析していこう。
  • 1