China 2004→2008

<China 2004→2008>16.日本との関係深めるソフト産業

2004/08/30 16:18

週刊BCN 2004年08月30日vol.1053掲載

 前号まで取り上げた携帯電話を離れ、今号から中国のソフト産業を集中して取り上げていく。世界の工場となった中国は現在、重点産業政策としてソフト産業の育成に力を入れている。2000年6月、中国政府は「ソフト産業と集積回路産業発展を促進する諸政策」という5か年計画を公布。優遇税制やハイテクパーク整備などの手厚い支援により、05年までにソフト産業の規模を300億ドル、輸出額を50億ドルに引き上げる計画である。(坂口正憲(ジャーナリスト))

 実際、中国のソフト産業はここ数年、年率30%以上の成長を達成している。99年段階、IT産業生産額の9割をハード分野が占め、ソフト分野の割合は1割しかなかった。それが04年になると、ソフト分野が4分の1を占めるようにまでなってきた。この急激な発展で、ソフトエンジニアは花形職種の1つとして、有能な若者を惹きつけている。筆者が知る李明氏もそのような1人である。中国の通信最大手と米通信機器メーカーの合弁会社で、Java言語と英語を操る先端のエンジニアとして働く。李明氏はまだ20代ながら8000元(約10万円)の月給を稼ぐ。それは、国営の鉄道会社で上部管理職にある50代の義父と比べてもほぼ倍の収入になる。むき出しの“資本主義”の中で、今のところ彼は成功者の部類に入る。そして日本のソフト産業は、李明氏のような人材を求め、中国との結び付きを強めている。

 IT関連情報誌「月刊コンピュートピア」(04年09月号)の調査によれば、野村総合研究所やNECソフト、富士通ビー・エス・シー(富士通BSC)など大手情報サービス会社の海外企業への業務委託については、全面的に中国を活用していることが分かる。李明氏も「日本企業の仕事をよく手掛ける」と話す。さらに同誌によれば、日本国内の主要情報サービス会社に就業する外国人技術者の約68%を中国人が占めているという。ちなみに全世界で活躍するインド人も国内では8%の存在でしかいない。日中間には様々な問題が横たわるが、ともあれ日中のソフト産業の関係はますますタイトになっていくだろう。中国ソフト産業の動向は否が応でも国内産業にはね返る。次号からその実態と将来像を掘り下げていこう。
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