テイクオフe-Japan戦略II IT実感社会への道標
<テイクオフe-Japan戦略II>53.電子自治体システム
2004/08/23 16:18
週刊BCN 2004年08月23日vol.1052掲載
国と地方の連携が課題
国民にとって本来は電子政府と電子自治体を区別する必要はなく、公共サービスとして一本化されるべきものである。いみじくも検討会の冒頭で座長の須藤修東大大学院教授が「行政サービスを国民にどう提供するのか、という点から遡及すべきではないか」と発言したが、そうした議論を飛ばしてシステム構築の検討が進められているということなのだろう。会議の報告内容を整理すると、まず共同アウトソーシング事業では表に示すようにシステム開発の実施団体を決定。今後はシステム開発のベースとなる業務パッケージソフトを、業務の標準モデリングとの適合性をみながら選定し、開発実施団体がそのパッケージをカスタマイズして実証実験を行う予定だ。総務省は、各自治体がこれまで個別運用してきたレガシー(旧式)システムを共同アウトソーシングセンターへと移行させていく方針だが、10年程度の移行期間が必要と想定している。その間は「レガシー連携」機能で共同アウトソーシングセンターとレガシーシステムを連携する考えで、この機能を福岡県、岡山県、北海道の3団体が開発していくことになった。
国・地方連携システムでは、モデルケースとして総務省が地方自治体に対して回答をめている調査など293件を対象に入力データの形態、送付ルート、回答ルートで類型分析を実施。これらをベースにワークフロー、XMLタグの標準化、文字コードの統一などの作業を進めていく。総務省では来年度から霞が関全体の報告徴収業務に関するデータ共有システムの開発を具体的に進めていく計画だ。
国にとってシステム構築の狙いは、これまで全国約3000の自治体ごとバラバラに導入されてきたシステムを、総務省主導で開発するパッケージが導入される共同アウトソーシングセンターに集約。基幹業務を担ってきたレガシーシステムもセンターとデータ連携できるようにしたうえで、今年3月末までに全自治体が接続を完了した総合行政ネットワーク(LGWAN)を通じて自動的にデータを吸い上げられる仕組みを構築しようということなのだろう。
そこで問題となるのが、国・地方のデータ連携をどのレベルで実現するのかという点。これからXMLタグの標準化や文字コードの統一などの作業が本格化するが、連携するレベルによって標準化の内容も違うだろうし、レガシー連携機能の仕様も異なるだろう。年度内には10団体程度で汎用受付システムが稼動する先行自治体があり、「後になってデータ連携できるようにシステムをつくり直させる場合、その費用負担はどうなるのか」との指摘もあった。
これまで独自にシステム開発に取り組んできた自治体の委員からは「地域の特性や各自治体の構造を考慮しない机上のシステムでは使いものにならない」との厳しい意見も。8月上旬に開催された電子政府・電子自治体戦略会議(主催・日本経済新聞)で麻生渡・福岡県知事が独自に開発した「共通化技術標準」を他の自治体が採用する動きに触れ、「国の取り組みを否定するわけではないが、自治体間の自主的な協力や競争を重視すべきではないか」と発言したが、改めて国・地方の連携や行政サービスのあり方について議論を深める必要があるのかもしれない。
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