China 2004→2008

<China 2004→2008>15.知財の輸入超過続く

2004/08/23 16:18

週刊BCN 2004年08月23日vol.1052掲載

 これまで数回にわたり、中国の携帯電話市場の現状と将来を展望してきた。それをまとめると次のように言える。──世界最大の需要を抱える消費市場は、今でも順調に成長している。そうした恵まれた土壌の上で、国産(端末)メーカーは実力をつけ、シェアを伸ばす。ただ、産業が生み出す付加価値はそれほど高くない。自社ブランドを持つ国産メーカーも基幹部品は海外からの輸入に頼っており、独自技術の蓄積は薄い。2005年夏に第3世代(3G)携帯電話サービスが始まっても、この状況に大きな変化はないだろう。中国独自の3G規格TD-SCDMが商業的に成功する確率は低く、国際標準の3G規格W-CDMA、cdma2000が主流になりそうだ──。(坂口正憲(ジャーナリスト))

 こうなるとTD-SCDMに向け投資をしてきた国産メーカーにアドバンテージはなくなる。結局、W-CDMAやcdma2000で技術を蓄積する海外メーカーから基幹部品を調達せざるを得ない。そもそも端末に高度な機能が求められる3G携帯電話サービスが始まると、国産メーカーは海外勢力に太刀打ちできなくなる可能性もある。3G端末に搭載される高度なAV(音響・映像)処理技術などはブラックボックス(外部に技術を供与しない状態)化されている場合も多く、簡単に調達できないことも考えられる。

 となると、3G端末の開発競争がすでに進んでおり、デジタル家電分野で技術力を持つ日本メーカーにとっては、中国の携帯電話市場に再チャレンジする絶好の機会になる。実際、以前も述べたようにNECや松下電器産業は中国事業の強化に乗り出した。この夏、中国ではNECや松下電器が最先端商品を訴求するテレビCMを頻繁に見かけた。そこには、2008年には1億人を超えると見られる中国の3G携帯電話ユーザーを、高い商品力で囲い込もうとする狙いがありありと見える。

 中国でも、ビデオカメラやデジタルカメラなどハイテク映像商品で日本メーカーが高いシェアを持っている。このことを考えると、3G端末で日本勢が国産勢からシェアを奪う可能性は十分ある。膨大な消費市場を抱えながら、技術の蓄積がままならない。知的財産の輸入超過が続く。ジレンマを抱えながら中国の携帯電話市場は今も膨張している。
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