情報化新時代 変わる地域社会

<情報化新時代 変わる地域社会>第14回 京都府精華町(下) インターネットサービスの内容見直しへ

2004/08/09 20:43

週刊BCN 2004年08月09日vol.1051掲載

 精華町が住民サービス向上の施策として、新庁舎・情報センター整備とともに取り組んだのが、各種インターネットサービスの充実だ。関西文化学術研究都市の中核地域として、財団法人マルチメディア振興センター(FMMC)や旧通信・放送機構(TAO)などと連携したネットワークのパイロットモデル事業や実証実験などを実施し、インフラの完成度は高いレベルにある。転入してくる新住民が、早期に精華町に溶け込んでもらうためにも、インターネットサービスの拡充は不可欠。町営各種施設の予約や精華町を含む相楽郡4町立図書館の蔵書検索サービスなどとともに取り組んだ「すこやか健康づくりシステム」も、その一環だ。(山本雅則)

新たな可能性発見の一方で利用頻度にばらつき

■健康増進にネット活用

 すこやか健康づくり支援システムは、1998年度に当時の通産省地域生活空間創造情報システム整備事業を活用して整備を進めた。双方向の情報交流で住民間のふれあいを高められるようなシステムを構築し、楽しみながら健康増進を図るとともに、コミュニティの形成にも役立てようというのが狙い。99年5月に町内関係部門との協議やシステム開発に着手し、翌00年4月に本格稼動した。

 具体的には、静止画付電子メールやメールマガジン機能を提供し、住民間の対話や仲間作りに活用できる「健康仲間づくり支援システム」、ラリー形式で健康イベントを提供する「健康促進ラリーシステム」、地域福祉センターや体育館等の予約状況照会や仮予約を行える「健康福祉施設予約システム」、住民が入力した血圧や体重などの情報をもとに保健師による指導や相談受付を行う「専門スタッフ指導相談システム」で構成されている。

 このうち最も利用されているのは、施設予約サービス。社会福祉センターのホールや会議室のほか、町営のグラウンドやテニスコート、体育館などの利用状況チェックと仮予約が行えるため、頻繁に活用されている。しかし、他のシステムについては、利用状況は必ずしも芳しくない。健康促進ラリーシステムは、当初こそウォーキングラリーなどのイベントを提供したものの、継続的なイベント提供はできていない。また、保健師が医師と住民の間に入り、健康管理の指導や相談を行う専門スタッフ指導相談システムも、ごく一部の利用にとどまっているというのが実際だ。

 「若いお母さん方なら直接われわれにメールを送ってこられる人もいる」とは、精華町民生部衛生課の入田明子保健師。日常的に電子メールを利用している世代では、アクセスすべき相手が判っていれば、直接コンタクトをとる場合も多いということだ。裏を返せば、対象として想定している中高年層は、インターネットサービスとの接点が依然として乏しいということができる。

 こうした状況について、岩井秀樹・精華町総務部財政課情報システム係長は、「インターネットサービスへのアクセスには、せいか町民カードとパスワードの発行を受けた16歳以上の住民に限られていることも、利用低迷の要因の1つ」と分析している。

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 町民カードの発行を受けた住民の割合は、まだ4割程度にとどまっている。新たに転入してきたニュータウン住民は、転入の際に発行を受けている場合も多く、カード保持者の6割をニュータウン住民が占めているが、従来からの住民は4割と少数派。

 町民カードの利用促進というレベルから再度検討する必要があるということだが、「個人認証の問題もあり、精華町単独では負担が大きい。京都府が住基カードの副次利用なども検討しているところでもあり、総合的に判断していく必要がある」(岩井係長)とみている。

■血糖値高い住民の健康指導実験も実施

 利用状況は必ずしも芳しくないインターネットサービスだが、体制を整えていたことが幸いした面もある。旧TAO、松下電工との連携で行った「電子健康モニター実証実験」がそれだ。第1回目は、01年に6カ月にわたり実施した。血糖値が高く、健康維持のための指導が必要と判断された住民3人を対象とし、対象者から毎週データを送信してもらい、それを医師と保健師が指導する形で行った。「常時訪問指導できないことも想定し、障害というハンディキャップを持つ人にも参加してもらった。データの記録という点では有効だったし、障害者の方の場合は指導の点でも効果が表れた」(入田保健師)という。しかし、医療の観点からは、送られて来るデータをフォローするのが大変なことも判明。これを踏まえ、03年の第2回目の実験では、医療行為のサポートを主眼とするのではなく、健康づくりにポイントを置く形に軌道修正した。

 同じく血糖値の高い住民を対象に松下電工の「ウェルナビ」端末を用い、対象者が毎食事のデジタル写真を送信すると松下電工がカロリーやたんぱく質、脂質、糖質のバランスなどを分析し、その結果を対象者本人と町に通知するという形で実施した。「生活習慣が把握できるようになったことで、指導の効果が出たし、糖尿病患者をケアする方法論の1つとして活用できることが判明した」(入田保健師)という。また、同じく指導にあたった藤原奈緒保健師も「保健指導における電子画像の利用価値に初めて気がついた」と、今後の精華町の保健指導への応用の可能性を示唆する。精華町にとっても収穫は得られたということのようだ。

 期待と裏腹な面もあることが判明した精華町の各種のインターネットサービス。今後の課題は、実効性のあるシステムへの再構築。まずは、「今秋予定している町のホームページ拡充の中で、より目立つ形にリニューアルし、それぞれの使い勝手自体がどうなのかを見極め、システムの見直しも考えたい」(岩井係長)としている。これまでの経験を有益な資産に転化させていくことが、精華町に求められている。
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