情報化新時代 変わる地域社会
<情報化新時代 変わる地域社会>第13回 京都府精華町(上) 双方向で実効のあるシステム目指す
2004/08/02 20:43
週刊BCN 2004年08月02日vol.1050掲載
新庁舎完成に合わせ情報化 導入段階から第2ステージへ
■総合窓口支援システムが稼動精華町の行政情報化への取り組みは、「けいはんな」の整備に伴う地域情報化とは切り離せない。93年4月に「けいはんなプラザ」が竣工したのに合わせるように、精華町の第3次総合計画の策定が始まり、(1)情報通信網の整備促進、(2)高度情報施設の整備促進、(3)地域情報化の促進──を柱とする計画が決定した。
同時に、旧来の庁舎では、こうした計画に対応できないため、新庁舎および情報センターの建設構想も動き出した。21世紀の時代潮流に対応するとともに、学研都市・精華町にふさわしい庁舎とは、住民サービスと事務の効率化が図れるのはもちろん、情報化を通じた住民の交流拠点としての機能を発揮できなければならないとの考えからだ。
もちろん、新庁舎完成までにも整備しておかねばならない点もある。旧庁舎内のLANや外部組織とのWAN整備などは、新庁舎完成まで放置できるものではない。このため、旧通産省などの支援事業を活用し、各種システムのオープン化やインターネットサービスの開発などを進めた。
「内部組織のあり方なども含め検討を行うとともに、先進自治体の事例もベンチマークとして参考にした」というのは、精華町総務部財政課の岩井秀樹情報システム係長。2001年2月には新庁舎内に情報センターが完成し、本格的なワンストップサービスの実現に向けた総合窓口支援システムが稼動を開始した。
総合窓口支援システムは、3つのステージを経て最終目標に到達する計画となっている。第1ステージは、人口増加が続く精華町にあって、新住民と町との最初の接点となる業務についてといったような生活者の視点からの住民サービスに力点を置いた。転入などにともなう手続きに際し、子供のいる世帯ならば教育関連の手続きなども同時に行える。さらに税や年金、国民健康保険、証明書発行なども総合窓口で処理できるようにした。
もっとも、予想外の事象も発生した。新庁舎と新サービスがスタートした直後の2001年3月から4月にかけて、精華町内で開発中だったニュータウンが完成し、転入が一時に集中してしまった。「転入者の利便性向上も意図したシステムだが、手続きが集中したことと、年度変わりの時期で従来からの住民に関する業務も増えたため、やや混乱もあった。このため、当初は総合窓口に一本化する計画だった来庁者の流れを多少変更」(岩井係長)して対応したという。
■03年には「地域ITボランティア制度」スタート
現在、総合窓口支援システム稼動から3年あまりが経過した。第1ステージはほぼクリアできたと言えるところまできた。第2ステージとして予定しているのは、ルーティーンな作業だけでなく、やや専門性を求められる、いわばイレギュラーな業務をどう取り入れるかということ。農業を例にとってみても、税務や支援制度、京都府などとの連携など、必要となる手続きは様々な部署に関連する可能性がある。「今はちょうど第1ステージから第2ステージへの移行期に当たる。専門性が必要な業務をどこまで総合窓口に取り込むことが可能かという判断は容易ではない」(岩井係長)という。
そこで、近く住民や町内に立地する企業を対象としたアンケートを実施、具体的な要望を踏まえ、実効のある第2ステージを目指す考えだ。調査対象となるのは、16歳から75歳までの無作為に抽出した住民1500人と企業100社。調査結果は、秋口にも集計される予定。町では、その結果を受け、住民代表も参加する検討委員会を設置し、第2ステージの具体目標を検討する方針だ。
これとは別に、精華町からの情報発信も強化する。具体的にはホームページの内容充実だ。「これまで、それぞれの部署に任せる形をとっていたが、各部署にしてもマンパワーが不足するなかで、ホームページの内容充実までは手が回らなかった面もある。そこで統一性のとれるシステムを導入し、部署が異なっても内容面では均質性を保てるものとする。新規に情報発信をお願いしなければならない部署もあり、作業量も異なるため、我々もサポートしていく考え」(岩井係長)という。
精華町では03年7月から「地域ITボランティア制度」もスタートさせている。主婦や学生、現役をリタイアした人など30人が登録しており、IT講習などを通じて、住民のITに対する理解と利用の促進に当たっている。街づくり協議会などとの連携も含め、町と住民が双方向で情報の受発信を活発化させ、利便性の向上を図るのが狙い。精華町では、第2ステージのスタートに向け、実効のあるIT活用への模索が続けられている。
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