China 2004→2008

<China 2004→2008>13.3規格混在の3G市場

2004/08/02 16:18

週刊BCN 2004年08月02日vol.1050掲載

 中国では2005年夏から第3世代(3G)携帯電話サービスが始まるとされる。当初予定は02年末開始だったので2年以上の遅れ。01年にはNTTドコモが「FOMA(フォーマ)」を市場に投入している日本と比べると、かなり出遅れる。その理由は、中国が“独自規格”にこだわったからだ。(坂口正憲(ジャーナリスト))

 中国の3G携帯電話は、国際標準規格である「W-CDMA」、「cdma2000」とともに、「TD-SCDMA」と呼ばれる独自規格でサービスが提供される(3規格混在)。そのTD-SCDMAは、独シーメンスと大唐電信科技産業(中国政府)が共同開発したものだ。

 余談だが、ドイツは首相自らが産業界のリーダーを引き連れて訪中するなど、国を挙げて中国との貿易関係を強化しており、鉄道や発電所といった社会基盤にドイツ(特にシーメンス)製品が多く採用されている。さて、これまで何度も指摘してきた通り、中国は世界最大の携帯電話ユーザーを抱える(08年で5億人の見通し)。従って当然、3G、その次に控える4G(第4世代)のユーザー数も世界最大となる潜在力を秘める。そこで単純にW-CDMA、cdma2000の3G携帯電話を導入してしまえば、中国は技術を買うだけの立場となり、膨大なライセンス料を欧米、日本に支払うことになる。少しでも技術的に関与できる知的所有権を確保するには、サービス開始が遅れ、技術的なリスクが高くとも独自規格をつくり出す必要があった。ともあれ、3規格が混在する中国の3G携帯電話市場は、世界の中でも最も競争の激しい(成長の速い)市場となりそうだ。

 W-CDMA、cdma2000と違って技術、ビジネスでの実績がないTD-SCDMAに関しては、中国国内の通信キャリア、端末メーカーでも腰が引けているといわれるが、市場の“外”から強力な後押しもあるようだ。中国政府のIT政策に詳しい人物に話を聞くと「国策のTD-SCDMAならトップシェアを取る必要がある。政府は威信をかけてあらゆる手を打ってくる」という。米調査会社In-Statによれば、中国で3G携帯電話の加入者は08年に約1億2000万人に達し、世界一の3G普及国となる。その市場を巡っての争いが激しくなっている。次号でさらに紹介する。
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