大遊泳時代

<大遊泳時代>第29回 デジタルライツの小さな破壊と創造

2004/07/26 16:18

週刊BCN 2004年07月26日vol.1049掲載

松下電器産業 役員

 「Winnyって何?」、東大の先生がどうして京都で逮捕される? 京大の間違いでは? いや実家が京都で帰省中? と一凡人の憶測をしていると、サイバー犯罪には、県警の縄張りはないとのこと。「hi-ho」でもCSセンターに全国の警察から、サーバー開示令状がよくきたものだ。Winnyの開発者は、ネット取引はサーバー不要のP2Pで、流通も中抜き、金のやり取りも1対1でやればよいとのこと。IPv6時代は行きつく所、まさにP2Pである。となるとDRM(デジタル著作権管理)、課金回収はどうなるのか。権利保護以前の問題である。音楽配信で数年議論してきた問題でもある。

 もう1つ、Winny上に「2ちゃんねる」のような大規模掲示板を作ると公言している。これは管理者のない町内掲示板と同じで、個人が勝手に貼り出し、また外して他へ流用するのと同じこと。もし、ひどい悪口でも書かれたら大変、安全弁のない民主主義になってしまう。コンテンツはデジタル化で、eラーニング、携帯配信、DVD、電子出版と、限りなくワンソース、マルチユース化していく。一方、既存の価値観、スキーム、仕組みの破壊がどんどん進んでいく。

 このような破壊と創造が進んだデジタル社会では、コンテンツの質と品位が限りなく要求される。と同時に、有料無料にかかわらず権利保護が大事となる。どうしたらいいものか、護送船団と規制緩和の間をうまく渡る方法はないものか。そのなかで、PHP研究所と松下電器産業のJV(ジョイントベンチャー)「メディアライツ」に新しい動きがある。作家、教授、経営者などのコンテンツをデータ化、著作権管理を丸受け、次にそれらを出版、電波、パッケージ、ウェブとマルチメディアに商品化、その仲介代理をしていくのである。独立して1年半、2人のヤングとロートルが、デジタルライツ世界の創造と破壊に向けて頑張っている。ねえワトソン君! 「私達のこのコラムもここに預けて稼ごうか!」。「まだまだ、品位と質を高めなくては!」。
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