テイクオフe-Japan戦略II IT実感社会への道標
<テイクオフe-Japan戦略II>50.e-文書イニシアティブ(上)
2004/07/26 16:18
週刊BCN 2004年07月26日vol.1049掲載
来年4月の施行目指す

すでに企業などの文書のほとんどが、コンピュータを使って電子的に作成されている現状を考えれば、紙に出力せずに電子データのままで保存できるようにするのは当然の流れではあるだろう。1998年7月には電子帳簿保存法が施行されて、当初から電子的に作成された帳簿に関しては承認制によって電子保存が可能になっており、03年2月に施行された行政手続オンライン化三法では紙での提出が義務付けられていた申請・届出文書も電子データによる提出が認められるようになった。
「95年ごろには閣議決定で電子保存を容認する方針が打ち出されていたが、文書改ざんなどの問題もあって踏み切れなかった。ようやくITの飛躍的進歩によって電子保存を実現できる環境が整ってきた」(IT担当室)との認識だ。e-Japan戦略が始まる以前から文書保存義務の規制緩和を求めてきた日本経済団体連合会が、今年3月に発表した「税務書類の電子保存に関する報告書」でも、紙の書類の電子化プロセスに関する技術が著しく進歩していることを強調。税務書類の紙による保存コスト年間約3000億円を削減する効果が期待できるとの試算も公表した。
e-文書イニシアティブについてはこれまで「文書保存コストの削減」ばかりが強調されているが、問題の本質はそれだけではない。法令によって保存が義務付けられてきた文書は、検査や監査を実施するうえで必要となる書類が大半である。脱税や粉飾決算など企業の不正事件が後を絶たないなかで、ある意味で検査や監査のあり方そのものが問われていると言って過言ではない。米エンロン事件や三菱自動車工業の欠陥隠し事件でコーポレートガバナンス(企業統治)やコンプライアンス(法令遵守)への注目がますます高まっているだけに、ITを活用することで検査や監査を効果的に実施して企業経営の透明性を高める視点も必要となるだろう。また、裁判などの係争に備えた文書保存のあり方も企業としては検討しておくことが重要と考えられる。検査や監査を行う側にとっても、IT時代に対応した検査や監査のあり方を検討するキッカケになるかもしれない。現在、各府省ではITの活用によって業務改革を推進する取り組みをスタートしているが、電子保存の導入を機に従来の検査・調査業務を見直して簡素化・合理化を検討することも求められるのではないだろうか。
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